STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、エッジノードからクラウドをつなぐAIoT(Artificial Intelligence of Things)機器の開発とプロビジョニングを容易化することを目的としたWebベースツール「ST AIoT Craft」を発表した。

同ツールは、センサ内AI用に同社のスマートMEMSセンサに内蔵された機械学習コア(MLC)を利用する形で、IoT機器の開発とプロビジョニングに必要なすべての段階を統合し、セキュアで使いやすいアプローチを提供するもの。データの保護が行われているクラウド上で動作することから、デスクトップ上にダウンロードすることなくオンラインでアクセスでき、AIの専門家と組み込みソフトウェアエンジニアのように異なるチームのメンバー間での共同作業も容易に行うことができるという。

MLCは同社のユニークなMEMSポートフォリオの1つで、ディシジョンツリーの学習モデルをセンサ内で直接実行できるため、ホストシステムを使用することなく自律的な動作することで低消費電力かつ低遅延を実現しつつ、分類やパターン検出など、AI技術が必要な処理を効率的に実行することができるという特徴を有する。

また、ディシジョンツリーのモデル生成用に提供されるツールとして、AutoML機能を備えており、センサのデータセットに最適な属性、フィルタ、ウィンドウサイズを自動で選択してくれるほか、ディシジョンツリーを学習させてMLC上で実行することも可能で、コンフィギュレーションファイルの生成により、学習済みモデルの利用も可能としていることから、初心者でも同社のスマートセンサを迅速かつ容易に導入することができるようになるという。

さらに、IoT機器をプロビジョニングするために、Data Sufficiency Module(DSM)ツールを使用してゲートウェイをプログラムできることから、クラウドに伝送するデータ・ポイントを賢くフィルタリングでき、通信の最適化と消費電力の低減を実現できるとともに、今後の再学習の簡略化することができるともする。

このほか、ディシジョンツリーを使用してセンサ・ツー・クラウドIoTソリューションを構築するために役立つサンプルとして、ファンコイルのモニタリングや、資産管理、人の状態認識、頭部ジェスチャなどが用意されており、これらのサンプルを同社のSensorTile.box ProやSTWIN、STWIN.boxなどのIoT向けリファレンスボードで実行し、評価することもできる、これらのサンプルをカスタマイズして、独自データを使用したり、既存のデータセットを強化したりすることも可能だという。

なお、ST AIoT Craftは、オンラインを通じて無償で入手可能で、同社のST Edge AI Suiteリポジトリよりアクセスすることで、機械学習アルゴリズムの開発に必要なあらゆるソフトウェアツールやサンプル、モデルを利用できるようになり、同社のエッジAI製品であるSTM32マイコン、Stellarマイコン、MLCやインテリジェントセンサ処理ユニット(ISPU)を搭載したMEMSセンサなどで具現化することができるという。

  • ST AIoT Craft

    ST AIoT Craftの利用イメージ (提供:STMicroelectronics)