11月20日から22日までパシフィコ横浜では、エッジテクノロジーに新たな“プラス”で顧客起点の価値創出を実現する展示会「EdgeTech+ 2024」が開催された。事業変革期を迎える現代における最新技術が集結する同展示会で、キーサイト・テクノロジーは、2024年春に製品ラインナップに加わった「Keysight Riscure」製品を展示した。
2024年キーサイトに加わったRiscureのソリューションを紹介
2001年に設立されたRiscureは、さまざまなデジタルデバイスのセキュリティソリューションを提供してきたオランダの企業で、主にセキュリティ評価に用いる計測装置モジュール類の販売や、各規格に準拠した形での製品セキュリティ評価サービスを行っている。またさまざまな規格の認定機関でもあり、ICを中心とする多様なデバイスのセキュリティ試験を行っている。
同社は2024年春にキーサイトに買収され、現在はKeysight Riscureとしてサービスを提供。Keysight RiscureのBartek Gedrojc氏によれば、「かつてはオランダと米国の2か所に拠点を構える180人程度の企業であったが、キーサイトの一員となったことでグローバルでの事業拡大が順調に進み、サービス規模が拡大している」という。
「完璧なセキュリティなど存在しない」
Riscureが抱える顧客の事業領域は多岐にわたるというが、中でも主な柱となっているのが、半導体メーカー、オートモーティブ関連、そして政府機関だとしている。セキュリティ技術の進歩を追いかけるようにそれらを破るハッキング技術も発展しており、国防に関わるケースでは、ドローンなどに搭載されたICから機密情報を抜き取られてしまう可能性などもあるという。
Bartek Gedrojc氏は「完璧なセキュリティなど存在せず、時間をかければどんな技術も必ず破られる」と話す。そのためデータの堅牢性を保つためには、常にセキュリティ技術が進化を続ける必要があり、それら技術の信頼性を確認するという役割をRiscureが担っているとする。
PXIモジュール型のRiscure製品も発売予定
今回キーサイトブースで展示されたのは、電子デバイスの試験環境を模した製品群で、試験対象物であるECU Target Boardに、誤作動を引き起こすための負荷を与えるGlitch Pattern Generatorなどが紹介された。
試験にかかるリードタイムの低減や規格認定などを求める顧客、あるいは試験に要するリソースの削減を求める顧客の場合は、Riscureによる試験サービスが求められる場合が多いとのこと。一方で政府機関など情報の機密性が高く情報漏洩リスクを低減させたい顧客は、こうした試験用機器を購入して自前の環境において試験を行うケースが主流だという。
またブースでは、今後の発売が予定される「PXIモジュール計測器」についても紹介された。新製品は、前出のGlitch Pattern GeneratorなどのRiscure製品群をモジュール化するもの。RiscureのPXIモジュールや、取得した信号をデジタルデータに変換するデジタイザ、電気信号を波形変換するオシロスコープなどさまざまな機能を、PXIシャーシに差し込むことで機能を1台に集約できるといい、ケーブルが削減されることで、消費電力やデータ遅延、ジッタなどが低減されるとする。
Bartek Gedrojc氏はPXIモジュールについて、従来機器に比べて信号処理性能も高くリアルタイムでの演算が可能なことから、試験の高速化に貢献するとした。また、現在さまざまな機関が技術開発を進める“量子コンピューティング”を用いてもなかなか破られないような堅牢なセキュリティ技術(耐量子計算機暗号、PQC)を実現するため、すでに同暗号を評価する試験手法にも対応を始めているといい、今後も規格認定機関としての役割を果たしていきたいとしている。