ルネサス エレクトロニクスは11月26日、リアルタイム制御が必要な産業機器向けハイエンド32/64ビットMPU「RZ/T2H」の発売を開始したことを発表した。
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ルネサスの産業機器向けハイエンド32/64ビットMPU「RZ/T2H」および同じCortex-A55/Cortex-R52コアを搭載し、PLC/CNC/モーションコントローラ向けに最適化した「RZ/N2H」のパッケージ (提供:ルネサス。以下すべて同様)
同製品は、同社のRZファミリの中でもリアルタイム制御機器向け製品「RZ/Tシリーズ」の第2世代に位置づけられる製品群の最新モデルという位置づけで、アプリケーションCPUとして最大動作周波数1.2GHzのArm Cortex-A55を4コア搭載しているほか、最大動作周波数1GHzのArm Cortex-R52を2コア搭載。LPDDR4-3200をサポートするほか、Cortex-R52コアごとに大容量の密結合メモリ(Tightly Coupled Memory:TCM)を合計で576KB(ATCMが512KB、BTCMが64KB)搭載したことで、高いCPU性能と大容量メモリが必要なLinuxアプリケーションや、ロボットの軌道計画生成、PLCのシーケンス処理に加え、リアルタイム性能が要求されるモータ制御や産業イーサネットのプロトコル処理を1チップで実行することを可能としているという。
このため、同製品では産業ロボットなどで使用されるサーボモータを最大9軸まで高速・高精度に1チップで制御可能で、モータ制御に必要な三相PWMタイマ、電流値測定用のΔΣインタフェース、エンコーダインタフェース(A-format、EnDat、BiSS、Hyperface DSL、FA-CODERに対応)をすべて9軸分搭載しているとするほか、これらのモータ制御向け周辺機能をCortex-R52の低遅延バス(低遅延ペリフェラルポートバス、Low Latency Peripheral Bus:LLPP Bus)上に配置することでCPUからの高速アクセスが可能だとする。これらの各種機能はモジュール0に6ch分が、モジュール1に3ch分が割り振られているが、2つのモジュールは2つのCortex-R52のどちらからでも(CPU0でもCPU1でも)アクセスが可能で、仮にCPU0、CPU1ともに同じモジュール側にアクセスした場合はCPU1を優先する設定となっている。このほかLLPP Busには三角関数演算器(TFU)も接続されており、三角関数の処理を行うことも可能だという。
また、産業イーサネットとして、PROFINET、EtherCAT、EtherNet/IP、ModbusTCP、OPC UAなどに加え、次世代のTSN規格にも対応しており、4つのイーサネットポートをマルチプレクサで切り替えて活用することで、さまざまなニーズに対応することが可能だという。マルチプレクサの設定はレジスタをいじる形で変更が可能で、CPU起動時の初期設定の際に併せてセッティングされるという。
実際の性能としては、同社が他社製品と比べたところ、アプリケーション処理性能では他社のCortex-A53×1コア製品と比べて1.26倍の性能、リアルタイム処理性能では他社のCortex-R5×1コアと比べて1.7~2.1倍ほど電流ループ処理時間を短くできることを確認したという。
なお、ルネサスは同等のCPUコアとメモリを搭載しつつ、PLCやモーションコントローラなどのコントローラ機器に最適化する形でΔΣインタフェースやエンコーダに若干の変更が加えられている小型パッケージ採用の「RZ/N2H」も2025年第1四半期に発売する予定だとしている(RZ/T2Hは729ピンFCBGA、23mm×23mm、0.8mmピッチで、RZ/N2Hは576ピンFCBGA、21mm×21mm、0.8mmピッチとなっている)。