NECはこのほど、報道関係者向けにエンタープライズ(民需向け)事業における市場動向や最新トピックスを紹介する「NEC Media meetup」を開催した。
本稿では、NEC Media meetup内で「ひととAIの新たな未来を実現するNEC Personal Consultant」というテーマで紹介された、生成AI活用した接客向けデジタルヒューマン「Saya」について紹介する。
NEC×アイシンで共同開発
NECは、AI・ロボットの浸透によるイノベーションの加速や非接触・デジタルなど暮らしの多様化、新たなコミュニケーション文化の定着により、情報過多で何を選択すべきかわからない人やデジタルが使えず取り残されてしまう人が出てきてしまっていることを危惧している。
そんな中、同社では「テクノロジーの力で、誰ひとり取り残さない社会を。」をテーマに掲げ、生成AIとデジタルヒューマンロボットを組み合わせたサービスとして「NEC Personal Consultant」を開発した。
同サービスは、「豊富な知識」「あらたな気づきを共に探す」といった特徴を持つ生成AIと、みんなに親しまれる存在でありながら、コトバ以外での意思疎通が取れるデジタルヒューマンロボットを組み合わせることで、新たな視点をもたらしつつ、人の気持ちに寄り添う。
このサービスは、NECがアイシンと共同で行っている取り組みで、NECの生成AI製品や生体認証技術を活用し、アイシンが開発したマルチモーダル対話エージェントと組み合わせることで、ヒトに寄り添う共感的なAIインタフェースを実現し、人間に近い自然なコミュニケーションを実現しているもの。
ヒトが相手の表情や声色からお互いの気持ちを推測するように、カメラ画像や音声からユーザーの状況や想いを汲み取り、さらにLLM(大規模言語モデル)と融合することでユーザーに寄り添う共感的な対話インタフェースを可能にしている。
また、同サービスはデジタルヒューマンである「Saya」を活用した独自技術で、表情・視線・ジェスチャなどの非言語表現をリアルタイムかつ適切に表出し、ヒトとAIとの温かく自然なコミュニケーションが可能になっている。
12月から金融業界向けサービスを提供
サービスの導入用途としては「金融コンサルタント」「ショップアシスタント」「サービスカウンター」「広告・販売アシスタント」「行政カウンター」といった先が想定されている。12月から金融業界向けのサービスの提供を開始し、順次、適用業種を拡大していくという。
具体的には、Sayaの「本日はどのようなご相談でしょうか?」という質問に、「家を買うので住宅ローンを相談したい」「子ども教育資金について悩んでいる」「リスクの少ない資産運用を教えて」といった言葉を投げかけると、ローンの相談や資産運用相談などについて詳しく解説してくれる。
「3000万円の住宅ローンの月々の返済額を知りたい」といった具体的な数字を入れ込んだ質問にも、その金額に応じたシミュレーションを返答してくれる。
このような金融の専門知識を習得するために、同サービスでは、ファイナンシャルプランナー(2級)の過去10年分のテスト問題・回答をRAGデータに使用していたり、金融有識者が作成した対話データ(モデル正解例)をFew-shotデータとしてRAGデータに使用していたり、という工夫が施されている。
また、クエリ―と過去会話履歴を重み付けしてベクトル化し、専門家によるモデル会話例(Few-shotデータ)を検索することでプロンプト量を90%以上削減し、応答制度を向上しているほか、住宅ローン計算などに関数(Function Calling)を活用し、生成AIが苦手な計算精度を向上させている。
Sayaは声、目線、表情やジェスチャーでわかりやすいため「デジタル操作に不慣れな人」や、相談しながら納得感を持って決められるため「複雑な商品を購入したい人」、対話しながら、気持ちに寄り添い、答えを導いてくれるため「悩みを持つ人」をターゲットにしているという。
NECは今後、MNC(マイナンバーカード)認証などの認証技術の適用を拡げ、パートナーAIシステムの活用領域を拡大していくとともに、デジタルヒューマンの安全な利用に向け、AI活用の倫理やガバナンスのあり方を提言していく構え。