ソフトバンクは11月5日、自動運転車の遠隔サポート向けの「交通理解マルチモーダルAI」を開発したと発表した。低遅延なエッジAIサーバ上で動作し、AIが自動運転車の状況を即時に理解して自動運転を遠隔で支援する。将来的にはマルチモーダルAIから自動運転車へ直接指示を行うことで、運行業務の完全無人化を目指す。
マルチモーダルAIが自動運転を遠隔で支援
交通理解マルチモーダルAIでは、自動運転車のドライブレコーダー映像などと、現在の交通状況を問うプロンプトを入力することで、AIが複雑な走行状況やリスクを判断し、安全な走行を可能にするためのアクションを生成する。
汎用的なAI基盤モデルに、交通教本や交通法規などの日本の交通知識に加え、一般的な走行シーンや予測が困難な走行状況におけるリスクと対処方法を学習させた。これにより、交通状況と走行リスクを高度に理解できるマルチモーダルAIを構築した。
慶應義塾大学での実証実験
ソフトバンクは、同マルチモーダルAIを活用した自動運転の遠隔サポートの実証実験を、2024年10月に慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパスで開始した。自動運転車が予期せぬ事態に直面して走行が困難になった場合でもスムーズに走行を続けられるように、AIが外部から自動運転を支援できるかどうかを検証している。
例えば、「横断歩道の手前に停車中の車両がある状況での走行」というシナリオでは、左側に停車中の車両の陰から横断しようとする人物を見落とす可能性があり、自動運転車が横断歩道に差しかかった際に、死角から飛び出す歩行者と衝突するリスクがある。
道路交通法では、信号機のない横断歩道を通過する際、横断歩道の手前に停車中の車両がある場合は、その前方に出る前に一時停止することが義務付けられている。
実証実験では、自動運転車が停車中の車両と横断歩道に接近してリスクが高まると、「横断歩道の手前に停車中の車両があります。歩行者が飛び出してくる可能性があるため、一時停止してください」と生成し、外部から自動運転を遠隔サポートできることを確認できたという。
ソフトバンク 執行役員 データ基盤戦略本部 本部長の丹波廣寅氏は「ソフトバンクは、国内最大級のAI計算基盤の整備と国産大規模言語モデル(LLM)の開発を進めている。通信技術とAIの融合が社会課題を解決できると確信している」とコメントする。