世界中に哺乳類の6000種よりも多い約1万1000種が存在し、人の次にゲノム解析が進んでいるとされる「鳥」。このゲノム解析の進展により、鳥の分類にも変化が生じるようになってきた。そんな最新のゲノム解析を踏まえて“鳥”とは何か? を知ることができる特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」が東京・上野の国立科学博物館(科博)にて2024年11月2日より開催される。
同展最大の特徴は、国立科学博物館が持つ3000点の標本含め、国内のほかの博物館などの協力も得て展示される600点以上の貴重な標本群。世界中の大小さまざまな鳥たちの標本が一堂に会するこれまでになかった規模の“鳥”に関する展示会で、科博の特別展のテーマとしても初めてのものとなるという。構成は序章「鳥を知ろう」から始まり、第2会場の第8章まで全部で9つの章立てとなっている。序章では、鳥という生き物が環境の影響を受けやすく、たやすく絶滅してしまう存在であることを日本から姿を消した大型のキツツキである「キタタキ」や「トキ」、「コウノトリ」などを交えて紹介している。
-
会場入り口では音声ガイド(有料)もレンタル可能。ナビゲーターは日本野鳥の会の会員でもある芸人のレイザーラモンRGさん(男子への同展おすすめは猛禽類たち)と、子供のころから鳥が好きだという女優でタレントの高柳明音さん(おすすめはシマエナガ)。解説件数22件と、かなり内容が詰まった音声ガイドになっていた
恐竜の子孫である「鳥」
続く第1章「鳥類の起源と初期進化」では、獣脚類恐竜の子孫である存在として、現生鳥類の基本形態を見た後に化石記録を基に鳥類の起源と初期進化について見ることができる。
第2章「多様性サークル」は、ゲノム解析によって変更が加えられた日本鳥学会による「日本鳥類目録」の改訂第8版に基づいて44目に増えた鳥たちの関わり合いをそれぞれの目に何種存在するのか、といった形で見ることができるほか、ハヤブサがタカ類よりもインコ類に近いといった意外な鳥の進化系統を知ることもできるようになっている。また、現在、人類が確認できており、約2600万年前に生きていた翼開長7mの史上最大の飛べる鳥「ペラゴルニス・サンデルシ」の生体復元モデルも展示されており、その大きさを間近で感じることができる。
第3章「走鳥類のなかま」は、古口蓋類に属するダチョウやエミューなど、飛ぶよりも地上を歩く・走ることを得意とする鳥たちの紹介するコーナー。これまではダチョウ目にまとめられていたこれらの鳥たちは、無飛翔への進化がそれぞれ別に起こったことが分かったことで4つの目に分けられることになるなど、ゲノム解析の結果で大きく扱いが変わった存在という立ち位置となっている。
第4章「カモやキジのなかま」は、新口蓋類で最初に分岐した系統で、恐竜が絶滅した白亜紀末の大絶滅を生き延び、現在まで進化を続けてきた鳥たちで、人間の食料になってきた鳥のグループとも言える。章のタイトルにもなっている「キジ」は、日本の国鳥であり、福沢諭吉が用いられた1万円札にも描かれていたものの、これまで日本固有種とはされていなかった。しかし、ゲノム解析よりコウライキジとはDNAが異なることが判明したことから、日本鳥類目録第8版にて、新たな日本固有種5種のうちの1種として認定された。
第5章「陸鳥や水鳥のなかま」は、新口蓋類の中でキジカモ類を除いたグループである「新鳥類」の中でも猛禽類が出現する前までのさまざまな環境に適応した鳥たちを見ることができ、続く第6章「猛禽とそのなかま」で、哺乳類や鳥類などを捕食する「タカ目」や「ハヤブサ目」、「フクロウ目」など猛禽類たちの多様な姿を見ることができる。
そして第1会場最後となるのが第7章「小鳥のなかま」として、新たな鳥類分類で最大派閥となった「スズメ目」のさまざまな小さな鳥たちの姿を見ることができるほか、ゴクラクチョウの名でも知られるスズメ目フクチョウ科の色鮮やかな鳥たちを特集として間近で見ることもできる。
特設ショップに続く第2会場はエピローグとなる第8章「鳥たちとともに」と題して、鳥そのものではなく、鳥たちの名前を冠したさまざまな乗り物や、環境保護に努める企業の取り組み、そして貴重な剥製標本の取り扱いなどについての説明があり、いかに鳥という生き物が人間の身近な存在であるかを知ることができる。
さまざまな企業が鳥の保護を含めた環境保護の取り組みを進めているほか、昔の標本の貴重性、総合監修者である科博の西海功先生がおススメする関東近県の野鳥観察スポットを紹介したパネルや、「はやぶさ」の名前を冠した小惑星探査機や戦闘機、バイク、電車などの紹介も行われている
なお、特設ショップでは、科博特別展恒例のオリジナルグッズやコラボレーショングッズも販売されている。今回は「PEANUTS」のコラボグッズとして、ウッドストックをターキー(七面鳥)風にデザインした手乗りサイズのふわふわなぬいぐるみなどが販売されているほか、「名菓ひよ子」のオリジナル版や手乗りサイズのペラゴルニス・サンデルシのぬいぐるみなども購入することができる。
特別展「鳥」の開催概要は以下の通り。
会場:国立科学博物館(東京・上野) 地球館地下1階 特別展示室
会期:2024年11月2日(土)~2025年2月24日(月)
開館時間:9時~17時(入場は16時30分まで)
休館日:月曜日、11月5日、12月28日~1月1日、1月14日、ただし11月4日、12月23日、1月13日、2月17日、2月24日は開館
入場料:一般・大学生2100円、小・中・高校生600円、未就学児は無料(国立科学博物館特別展券売所での当日券の販売のほか、オンライン購入として、公式オンラインサイト、ART PASS、アソビュー!、各種プレイガイドにて購入可能。各種プレイガイドでのチケット購入の場合、来場時に購入したコンビニ店頭で発行した紙チケットが必要なことに注意)
会場内は基本的に撮影可能だが、一部写真撮影禁止の展示物ならびに映像がある点に注意。会場内でのフラッシュ撮影、三脚、一脚、自撮り棒の使用および動画撮影は禁止。