ServiceNow Japanは10月15日~16日の期間で年次イベント「ServiceNow World Forum Tokyo」を都内で開催。同15日に会場内で同社の「Now Platform」や製品に組み込まれている生成AIの機能群「Now Assist」の日本国内における展開について、記者説明会を開いた。

第2四半期のビジネスは好調に推移

はじめに、ServiceNow Japan 執行役員社長の鈴木正敏氏が今年3月に公表した国内ビジネスの戦略に関して振り返った。

  • ServiceNow Japan 執行役員社長の鈴木正敏氏

    ServiceNow Japan 執行役員社長の鈴木正敏氏

同社では、戦略として「業界向けビジネスの加速」「“Beyond CRM”進化した顧客体験の実現」「日本発のパートナーエコシステムの確立」「中堅/成長企業市場での本格的事業展開」「お客さまファーストの価値提案・支援」の5つの領域に注力する方針を打ち出していた。これに「ビジネス上での生成AIの価値創出」を加え、「5+1」を事業方針としている。

  • 戦略の5本柱

    戦略の5本柱

鈴木氏は「業界向けビジネスは製造業、金融、公共などが堅調に推移し、Beyond CRMについてはカスタマーエクスペリエンスを推進するための投資を強化しており、フロントだけでなく社内外のワークフロープロセス全般を効率化・高度化している。日本発のパートナーエコシステム、中堅・成長市場でのビジネス本格化、お客さまへの価値提案・支援と5つすべてが順調に成長・進展を遂げている」と述べた。

続けて、同氏は「そして、+1というものが肝となり、生成AIが大きな柱になると宣言した。企業において生成AIをフルに活用していくためには、いかに業務に適用できるか、その業務が個別の手元の作業ではなく、関係部門をまたぐプロセス・業務に対して活用していくことが重要。それには、業務プロセスとシステム、データをつなぐエンゲージメントとしてのプラットフォームであるNow Platformに生成AIの機能を盛り込むことが1つの解になる」と力を込めた。

  • 生成AIによる価値創出に注力

    生成AIによる価値創出に注力

生成AIの投資は増やす意向だが、成熟度は低い

また、鈴木氏は先日発表されたNow Platformの最新版「Xanadu」において、追加されたNow Assistの機能が従業員や顧客、各業務部門の担当者などペルソナ別のほか、各業界別で機能強化されている点を強調する。

同氏は「製造、流通、銀行、通信、ハイテク、公共も含めるとともに、カスタマーエクスペリエンスに資する領域でも当社の生成AIが顧客満足度を高めるための施策につながり、実際の従業員の生産性向上にもつながる。こういった一連の流れとして単なる+1ではなく、すべてのビジネスの方針に関わるものであり、順調に進展している」と胸を張る。

Oxford Economicsと提携してServiceNowが調査・分析した調査によると、企業経営者の81%が生成AIへの投資を増やす意向を示している一方で、現時点におけるAIの成熟度は低い状態になるという。

このようなギャップに対して、同社のNow Platformは効果的だという。同社は昨年発表したNow Platformの「Vancouver」より、生成AI機能群であるNow Assistの提供開始したが、決算の数値にも表れているとのことだ。

実際、グローバルにおける第2四半期の決算では、売上高の成長率や利益性能指標すべてにおいて予想を上回り、2024年通期のサブスクリプション売上高と営業利益率を上方修正。サブスクリプション売上高は前年同期比23%増の25億4200万ドル、収益は同22%増の26億2700万ドルとなっている。

  • 第2四半期の業績ハイライト

    第2四半期の業績ハイライト

こうした好調な決算の状況を受け、鈴木氏は「Vancouverのリリース以降の株価上昇率は65.5%となり、市場から当社の価値だけでなく、生成AIとの相乗効果で当社の将来のポテンシャルが高まっているという評価ではないだろうか」と話す。

複数のエージェントをオーケストレートする「AI Agent」

続いて、ServiceNow Japan 常務執行役員の原智宏氏がNow Assistの最新状況と、今後のロードマップについて解説した。同氏は「AIが実際の業務に利するような状況を作っていくために業務のどこの観点で活かしていくか、つまりデジタルワークフローに対しての紐づきが重要。そのため、デジタルワークフローの中にAIが組み込まれて人をサポートしていく状態が生まれてこそ、AIが業務に利する存在になると考えている」と切り出した。

  • ServiceNow Japan 常務執行役員の原智宏氏

    ServiceNow Japan 常務執行役員の原智宏氏

原氏は、ビジネストランスフォーメーションを進めていくためのAIプラットフォームの技術要素について、プラットフォーム上に蓄積されているさまざまな「データ」をどのように活用していくか、どのような業務観点で「AI」を活用して実装していくのか、そして業務横断で業務の中で利用できるユースケースのAIを具備したワークフローで「アクション」につなげることが肝要だという。

こうした技術要素に対して、Now Platformはデータでは「Raptor DB」「Knowledge Graph」、AIは「ServiceNow LLM」、アクションは「Workflows」「Now Assist Skill」「AI Agent」などを備えている。

  • ビジネストランスフォーメーションのための「Now Platform」

    ビジネストランスフォーメーションのための「Now Platform」

Raptor DBは次世代のデータベースエンジンとなり、単一のアーキテクチャ、データモデルでトランザクションとアナリティクス両方のワークロードをサポートするほか、ServiceNow LLMは、業務のユースケースに合わせて構築された用途特化型モデルだ。

WorkflowsとNow Assist Skillは、実際のアプリケーションとして提供される機能となり、例えば応対している履歴やチャットの要約などがある。

特に同氏が重点的に説明したのは、AI Agentだ。その文脈として紹介したものがKnowledge Graphとなる。これは2025年前半に提供を予定し、Now Platform上に蓄積された情報を組み合わせて1人1人のユーザーが普段どのような形でコラボレーションして業務を進め、どのシステム・環境・サービスを利用しながら、エンゲージしていくのかという情報をグラフデータベースの中に蓄積していくことができる機能。これにより、LLM(大規模言語モデル)のRAG(検索拡張生成)として活用することで、パーソナライズされて業務にすぐに使えるアクションを提供できるという。

  • 「Knowledge Graph」の概要

    「Knowledge Graph」の概要

一方、AI Agentは複数のエージェントをオーケストレートし、自律的にビジネスプロセスを推進するというもの。

原氏は「複数のエージェントとやり取りしながら、業務全体を自律的に進めていく。例えば、当社のナレッジ管理ツールであるKnowledge BaseのAI AgentとMicrosoft Copilotなどサードパーティのエージェントを組み合わせて業務の最初から最後までをAIが自律的に行う。人の役割はAIを利用して業務を効率化していくことから、ある単位の業務をAIに任せて、AIが行う業務を管理・監督していく立場に緩やかにシフトしていくと考えている」と述べている。

今年11月~12月に提供開始を予定し、まずはカスタマーサービス管理(CSM)とIT Service Management(ITSM)から提供する。

  • 「AI Agent」の概要

    「AI Agent」の概要

現在、Now AssistはNECやNTTデータ、沖縄科学技術大学院、カルビー、日本通運などの国内企業が採用している。最後に鈴木氏は「日本では、ますます生成AIの活用が発展していくだろう。今後の戦略としては複数の日本のLLMベンダーと連携を検討しており、日本におけうNow Assistの活用を進める。そして、日本のビジネスは引き続き2桁成長を継続し、売上高に占める非IT領域の割合も拡大していく」と述べ、プレゼンテーションを結んだ。