ServiceNow Japanは10月3日、オンラインとオフラインのハイブリッドで先日発表した、ヒト、プロセス、システムをつなぐクラウドプラットフォームであるNow Platformの最新版「Vancouver(バンクーバー)」に関する記者説明会を開催した。

半年に1回のメジャーアップデートをしたNow Platform

まず、ServiceNow Japan 常務執行役員 ソリューション統括の原智宏氏は、グローバルにおけるビジネスの現状について、次のような認識を示した。

「生成AIが生活に浸透し、Now Platformを通じてどのようにして業務変革に適用するのかということに加え、サイバー攻撃は頻繁かつ巧妙になり、昨年比で38%の増加し、ビジネスの根幹にデジタルテクノロジーを取り入れる中で攻撃への対処が非常に重要だ。また、雇用主の77%が必要な人材を確保することが困難と感じており、スキル不足の深刻化と従業員の学習ニーズの高まりを受け、不足を補うテクノロジーを提供することが求められている。Vancouverは、こうした課題の解決に絞った機能を提供する」(原氏)

  • ServiceNow Japan 常務執行役員 ソリューション統括の原智宏氏

    ServiceNow Japan 常務執行役員 ソリューション統括の原智宏氏

また、原氏は「多くのビジネスにおいて生成AIの活用が見て取れた。幅広い分野でビジネスのボトムラインを改善し、トップラインを伸ばすためにメリットをもたらす生成AIを、どのように業務に組み込み、活用していくのかという試行錯誤が続いている状態だ」と述べた。

生成AIはビジネスに対して無限の可能性を引き出すと強調しており、同社に関連した業務としてカスタマーオペレーション、コーポレートIT、製品開発、研究開発全般と広範にコスト削減やイノベーションを加速することが可能だという。

同氏は「生成AIはバックオフィスからフロントオフィスまで、サプライチェーンの上流から下流に至るまで生成AIが生産性を改善させる1つの道具立てとして位置づけられようとしている」と話す。

独自の生成AIを組み込んだ「Vancouver」

同社ではVancouverに対して、入力/プロンプトなどの「意図やコンテクストの理解」、既存の情報要約や二次活用を促進する「ナレッジの蓄積・統合」、新たな情報の生成といった「コンテンツの生成」を可能とする、ドメイン固有の大規模言語モデル「Now LLM」を組み込んでいる。

  • 生成AIを組み込み、プラットフォームを進化させた

    生成AIを組み込み、プラットフォームを進化させた

生成AIという点においては「Now Assist」が肝となり、Service Nowを利用するすべてのユーザーをサポートするという。

具体的には、ヘルプデスク業務やカスタマーサービス窓口業務などを支援するライブエージェントや管理者、開発者、エンドユーザーをはじめ、Now Platformを利用者を支援するとともに、ポータル、ワークスペース、仮想エージェントで具体的かつ関連性の高い検索結果を提供するとのことだ。

また、Q&Aや各種ユースケースの予約で繰り返しのタスクを自動化し、解決までのリードタイムを短縮。さらに、マニュアルでのコーディング作業を削減し、開発生産性を向上できる。

  • 「Now Assist」の概要

    「Now Assist」の概要

原氏は「現在の組織は、さまざまなクラウドやツール、アプリケーションを利用することからサイロ化されて切り離された状態となっているが、Now Platformの生成AIを利用するれば企業全体のオーケストレーションが可能になる。当社はデジタルビジネスのためのインテリジェントプラットフォームを提供する」と胸を張る。

生成AIを組み込んだ機能群

次にVancouverの詳細について、ServiceNow Japan マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 部長の古谷隆一氏が説明に立った。

  • ServiceNow Japan マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 部長の古谷隆一氏

    ServiceNow Japan マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 部長の古谷隆一氏

同社では、企業変革に向けて生成AIは自動化との連携が不可欠という観点から、VancouverはAIによるインサイト獲得に加え、改善策の実装・実行にも活用できるプラットフォームとした。

  • 生成AIを活用した機能のユースケース

    生成AIを活用した機能のユースケース

今回のリリースのコンセプトは生成AIを組み込んだ「生産性向上の加速」と「エクスペリエンスの飛躍的改善」、セキュリティを強化した「アジリティの向上」の3点。以下がそれぞれの領域における新機能となる。

生産性向上の加速

  • Generative AI Contoroller
  • Now Assist for Creator
  • Next Experience workspaces

エクスペリエンスの飛躍的改善

  • Now Assist for IT Service Management(ITSM)
  • Now Assist for Customer Service Management(CSM)
  • Now Assist for HR Service Delivery(HRSD)
  • Employee Growth and Development

アジリティの向上

  • Zero Trust Access
  • Third party Risk Management
  • Clinical Device Management
  • Accounts Payable Operations
  • Vancouverのリリースコンセプトと新機能群

    Vancouverのリリースコンセプトと新機能群

これらの新機能からいくつか紹介する。Now Assist for Creatorは、テキストからコードを生成する「Text to code」により開発者の生産性を向上し、アプリ開発の時間短縮を可能とし、自然言語からコードを生成。

  • Now Assist for Creatorの概要

    Now Assist for Creatorの概要

Now Assist for ITSMはインシデントや問題の文脈に沿った要約を生成し、エージェントがレビューを可能にすると同時に、チャットの履歴の要約を生成。インシデント後に解決策のメモとコードを自動的に残し、インシデント管理のベストプラクティスを遵守するという。

  • Now Assist for ITSMの概要

    Now Assist for ITSMの概要

Now Assist for CSMは、報告された問題と対応に関する文脈をとらえてサービス対応を迅速化し、ケース、やり取りを含むさまざまなレコードの要約を生成し、解決データの収集を通じて運用を改善することを可能としている。

Now Assist for HRSDは、人事担当者がケースの内容やアクションアイテム、解決策を確認できるとともに、チャット履歴の要約を生成してエージェントに提供することで、人事ケースのクローズ時に解決策を自動で生成して記入する。

Zero Trust Accessは、細かく設定可能なコンテキストポリシーにもとづく粒度の細かいアクセス制御を可能とし、ユーザーとデバイスの一貫した検証でセキュリティ体制を改善することに加え、ユーザーのアイデンティティとアクセス権限を検証することで内部の脅威から保護する。

  • Zero Trust Accessの概要

    Zero Trust Accessの概要

Third party Risk Managementは、オンボーディングや適正評価手続きから始まるサードパーティの効果的なリスクマネジメントをサポートし、グローバル全体の集中リスクを見える化し、エンゲージメントに関するリスクを把握。

加えて、オンボーディング、適正評価手続き、契約更新、オフボーディング、リスク関連のアンケートなど、すぐに使えるコンテンツとワークフローを通じて生産性を向上するという。なお、これらの新機能群は、すでに利用が可能になっている。

最後に、Now Assist for ITSMのデモを披露した古谷氏は「生成AIによるNow Assistの要約機能は、これまではヘルプデスク担当者がログを確認して手動でサマリーを作成する必要があり、起票されるインシデントログすべてに目を通して文章を書き、ログを残さなければならず、多くの時間を割いていた。その点、Now Assistを利用すればヘルプデスクの生産性は大きく向上する」と力を込めていた。