鈴木浩之・LIXIL Advanced Showroom代表取締役の「人生の転機」【突然の社長指名】

「心の準備も何もできていないのに自分が社長になれるのか」─。2014年、人材総合サービス企業のアデコと11年に住宅設備メーカー5社の統合で誕生したLIXILが立ち上げた当社の社長に指名された当時のことを今でも覚えています。

 当社は当時、全国に約90あるLIXILのショールームの運営を手掛けており、圧倒的に女性社員の比率が多い会社でした。今も女性比率は95%ですが、当時は99.5%。しかも、それぞれ母体となった会社に入社した人ばかり。「私は会社から捨てられたのですか」。そんなネガティブな声が耳に入ってきました。

 このままではお客様の接客に対しても悪影響が出てしまうし、他の社員の士気も低下してしまう。「何としても会社を存続させなければならない」。とにかく現場に直接足を運び、社員一人ひとりと会話をするしかないと思い、全てのショールームを回って意見や思いを聞きました。

 当時、私が心掛けていたのは売上高や利益の目標を定めることよりも、まずは会社の文化を醸成することでした。男性目線で物事を決めていたのでは、現場の女性社員が求める環境をつくることはできません。

 そのためにも「お客さまの笑顔のために」というミッションを実現させるために何が必要かを膝詰めで議論していきました。彼女たちの意見をすくい上げて女性が働きやすい環境を整備していったのです。

 今でこそ「オンラインショールーム」で出勤せずとも接客ができたり、産休取得率も100%となるなど、女性社員に満足してもらえる労働環境を整備することができました。男性社員には女性の気持ちが少しでも理解できるようにするため、生理痛を体験してもらえるワークショップを開いたりしました。

 ただ、私から言わせれば、まだまだ道半ば。社員・お客様・売上高の3つをもっと上げていかなければなりません。そのためにも、デジタルで圧倒的ナンバー1を目指し、当社での働き甲斐をもっと感じていただけるようにしなければなりません。

 住宅設備はいかにお客様の暮らしにマッチングさせた商品をご提供できるかどうかが勝負です。その意味では、女性は貴重かつ大きな戦力です。もっと女性が輝けるように精進していきたいと思っています。

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