【厚生労働省】総裁候補の話題で持ち切り 年金改革・子育て政策の行方は?

9月27日に投開票される自民党総裁選は事実上の新首相選びであり、厚労省内では立候補が取りざたされる議員の話題で持ち切りとなっている。

 出馬に意欲を示す11人の中には、厚労相を3回歴任した社会保障通の加藤勝信氏の他、党厚労部会長時代に「こども保険創設」を提唱した小泉進次郎氏や現職の党年金委員会事務局長の「コバホーク」こと、小林鷹之氏ら、省と縁の深い名前もある。

 誰が次期首相になっても、社会保障が最重要政策の一つであることは変わりなく、官房幹部は「自民党内で新首相を選ぶ限り、極端な路線変更はないのでは」と話す。

 その上で、この幹部は「総裁選後の政局の方が大事」と指摘する。新首相選出直後の余勢を駆って10月にも衆院を解散、11月に投開票するとの見立ても出回る。そうなると、影響が避けられないのが重要政策の決定スケジュールだ。

 医療・介護の分野は子育て支援策の財源を捻出するために制度改革を予定。また、公的年金は5年に1度の制度改正を控えている。

 ある中堅は「11月から本格議論を始めると、年末までに決定するのは難しいだろう」と語る。年金制度改正は政治決断が必要な項目が多いだけに担当幹部は「事務方が勝手に方向性を決めるわけにもいかない。しばらくは審議会も開店休業状態にするしかない」と明かす。

 自民党は派閥裏金問題で国民の信頼を大きく損なっており、次期衆院選は苦戦が必至だ。省OBは「さすがに次の選挙で政権交代は考えにくいが、自民・公明両党の過半数割れも想定しておくべきだ」と指摘する。新たな連立協議の結果、社会保障政策が見直される可能性があるためだ。

 このOBは「特に子育て政策が見直し対象になりやすい」とみており、「先の通常国会で医療保険料に一定額を上乗せして子育て財源を確保する制度をつくったが、野党の理解は得られなかった。選挙の結果次第では一からやり直しになるかもしれない」と険しい表情だった。

大和総研副理事長・熊谷亮丸の視点「岸田政権の成果と積み残された課題」