日本郵政社長の増田寛也氏が退任へ 混迷続く郵政民営化の行方

相次ぐ不祥事、 現場の劣化が言われる中

「この時期での交代を前提にしていた」─こう話すのは日本郵政社長の増田寛也氏。

 2025年3月28日に日本郵政、グループの日本郵便は社長交代を発表したことを受け、4月2日に会見を実施。日本郵政社長には常務執行役の根岸一行氏、日本郵便は常務執行役の小池信也氏が昇格。増田氏と現日本郵便社長の千田哲也氏は6月の株主総会で退任する。

 日本郵政グループでは、郵便局でゆうちょ銀行の顧客情報の不正流用、25年1月には郵便局による配送委託業者への違約金、3月には配達員の飲酒の有無を確かめる法定点呼の不備といった不祥事が相次いでいる。飲酒をして配達した配達員がいるなど、現場の劣化が言われている。

 社長に就く根岸氏は現在東海支社長、小池氏は近畿支社長を務めるなど、現場に近い。この経験を生かして、再度の現場立て直しを図る。

 また増田氏は、19年にかんぽ生命保険で起きた不正営業を受けて、組織立て直しを期待されて20年1月に就任した。郵便事業が細る中、2万4000局の郵便局網を活用する「共創プラットフォーム」を打ち出してきたが、収益への貢献は道半ば。

 新体制では、M&A(企業の合併・買収)の活用も含め、非郵便事業の強化が問われる。次期社長の根岸氏は「自治体との連携をきっかけにしたい」と話し、各地で郵便局を活用した事業を生むことに意欲を見せる。

 政治の側から、郵政民営化を巻き戻そうという動きも出ている。自民党が全特(全国郵便局長会)の要望も受けて、郵便局網の維持に向けた財政支援を行うことなどを柱とした郵政民営化法の改正を検討している。一時は日本郵政と日本郵便の合併も盛り込まれる見通しだったが、「検討事項」にとどまった。

 だが、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の金融2社株式の3分の1を「当分の間」保有することを義務づけることも盛り込まれており、民営化が後退する内容。

 財政支援となると郵便局網維持を国民が負担することになる。民営化巻き戻しだけでなく、官業に回帰する動きに、新体制はどう対応するか。船出から波乱の展開も予想される。