米大統領選の勝敗によっては、台湾も大きな影響を受ける可能性がある。それは、世界の半導体市場に混乱を招く可能性があることを想定しておく必要があることを意味する。
ハリスvsトランプの構図なった選挙戦であるが、これまでのあらゆる世論調査を見ると、全米だけでなく、勝敗の行方を左右するベンシルベニアやアリゾナなど激戦7州においてもハリスがトランプを若干リードする展開が報じられ、ハリス有利の見方が広がっている。しかし、米国大統領選挙は各州において勝利した候補者が割り当てられた選挙人を総取りできる方式となっており、獲得票数や支持率で勝る候補者が勝利するとは限らない。仮に、バイデン路線を継承するハリスが勝利すれば台湾への防衛支援を続けるだろうが、トランプは台湾は米国に防衛費を払うべき、台湾が半導体産業を奪ったなどと台湾軽視の可能性もちらつかせており、それによって中国による圧力が強まる恐れがある。では、台湾有事への懸念が日本企業の間でも広がる中、中国はどういった手段、手順で台湾制圧を考えているのだろうか。
これについては様々な議論があるが、まず考えられるのが人民解放軍が台湾海峡沿いに集中的に配置されるシナリオだ。ロシアがウクライナへ侵攻する直前、異常な数のロシア軍がウクライナ国境に集中的に配置されたように、福建省など台湾海峡沿いに人民解放軍が集中的に配置された場合、習政権は軍事演習という名目で軍の集中配置をアピールするだろうが、台湾有事のプロローグとなる可能性が高い。
そして、中国は台湾が島という現実を利用する形で、空と海から台湾を封鎖する行動をとるだろう。封鎖といっても様々なケースが考えられるが、1つに台湾本島と諸外国、台湾本島と離島をつなぐ海底通信ケーブルなどを切断し、台湾を外とのコミュニケーションが取れない孤島にする作戦だ。昨年2月には、中国大陸に隣接する台湾離島の馬祖列島で台湾本島と繋がる海底ケーブル2本が中国船によって切断され、その後、島外との連絡が取れなくなる事態が発生したが、中国は情報封鎖を行うことで台湾を混乱させることだろう。また、物理的なものでは海上封鎖がある。台湾もエネルギーや食糧などそのほぼ全てを海上貿易に依存しているが、海上封鎖を行うことで台湾を混乱、疲弊させ、同時に米国による台湾防衛を不可能にさせる狙いもあろう。
そして、台湾を海、空に加えサイバー空間の封鎖も行い、混乱に陥ったところで大規模なサイバー攻撃を台湾軍の司令部や重要インフラなどに行い、台湾軍の基地などへのミサイル攻撃を実施していくことが考えられる。無論、商業施設や住居地区などへ攻撃をすれば人道的観点から非難が広がることから、それは極力控えるだろう。しかし、台湾社会が混乱に陥ったところでサイバー攻撃やミサイル攻撃を行えば、中国軍の台湾上陸を抑えることは事実上難しくなろう。その後、中国は台湾海峡沿いに集中的に配置した兵力を台湾本島に上陸させ、制圧を目指すことになる。
このような手段、手順で台湾制圧作戦が上手くいくとは限らない。だが、中台関係が冷え込む中、習政権は武力行使の可能性を全く排除しておらず、頼政権の動向、米国の台湾防衛への意思や能力などを注視し、以上のような具体的なシナリオを練っていると考えられる。