NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は9月2日、建設業や不動産業界の有識者と協働してスマートビルのベストプラクティスの創出と先端デジタル技術の社会実装を目指す「スマートシティ デジタル実装コミュニティ」の発足について発表し、記者説明会を開いた。
コミュニティ発足の背景
同社はこれまでも、Smart Worldの実現に向けた注力領域の一つとして、大規模複合再開発やスタジアム、アリーナ、ホテルなどを中心に、街づくりをデジタル技術で支援してきた。その中で、スマートシティの実現に求められる街のデータの収集と利活用に向けて、街区のデータプラットフォーム整備を進めている。
一方、建物のスマート化においては、ビルや建物ごとにデジタルアーキテクチャが個別最適化されているほか、設計と施工でプロセスや業界内の関係者が分断されていることから、デジタル化の検討が後追いとなっている。さらに、建物の価値は経年により劣化するため竣工までを主体としたビジネス構造であり、その後のアップデートやデジタル技術の更新は検討されにくい。
こうした課題に対し、同社はデジタル技術の企画と実装を一元的に支援するMSI(Master System Integrator)の取り組みを強化している。そうした中、今回は業界横断での課題解決と実フィールドでの社会実装に向けて「スマートシティ デジタル実装コミュニティ」を発足する。
ビルや街区開発の実フィールドでの実証を通じ、スマートビル化を
同社をはじめ、国内でスマートビル化の促進に関わるステークホルダーから、有識者がSmart City Catalystとしてスマートシティ デジタル実装コミュニティに参画する。コミュニティでは、NTT Com内のSmart City Catalystと共に業界課題解決とデジタル実装促進に向けたワークショップや勉強会を開催する。
さらには、GUTP(東京大学グリーンICTプロジェクト)との連携や、IPA DADC(情報処理推進機構 デジタルアーキテクチャ・デザインセンター)の「スマートビルガイドライン」などを参考にしながら、ビルや街区開発の実フィールドでの実証を通じて、スマートビル化を進める。IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想やモバイルインフラシェアリング、グリーンデータセンターなどの次世代技術の適用についても検討する。
MSI(Master System Integrator)の取り組みを強化
デジタル技術の企画と実装を一元的に支援するMSIでは、スマートビル化の多岐にわたる専門知識と、関連するステークホルダーとの連携を強化する。企画構想段階から、設計、パートナー選定、建築、導入後の運用やアップデートまで、広く支援するとのことだ。MSIの取り組みは海外で先行しているが、これを日本の商習慣や既存の街づくりのプロセスを知るNTT Comが国内で推進する。
ビルOSを活用したスマートビル化ソリューションのデモ公開
説明会では、NTT Comが提供するビルOS「Smart Data Platform for City」を活用したソリューションのデモンストレーションが披露された。Smart Data Platform for Cityとは、人の流れや施設情報、ロボットからの情報などさまざまなデータをシームレスに統合できるプラットフォーム。
エレベータとロボットの連動
ビルのエレベータと可搬式のロボットを連動させ、来客を目的地まで案内するデモが行われた。デモでは、28階に到着した来客を29階のエントランスまで案内するという想定。ロボットは自動音声なども使いながら案内する。エレベータとロボットは連携しているため、ボタンを押さなくてもスムーズに移動できる。
IOWNを活用した次世代コミュニケーション
低遅延で空間を接続可能なデバイス「Window」をIOWN APNで遠隔地と接続することで、同じ場所にいるかのようなリアルタイムな会話を実現する。また、NTTグループが手掛ける触覚伝送デバイスを活用すれば、映像や音声だけでなく振動によるコミュニケーションも取れる。
ビル 、商業施設のデータ活用
街区データダッシュボードは、そのビルだけでなく近隣の商業施設の来訪者に対し、エリアの魅力を発信するための機能。街やビルに関するさまざまなデータを連携して、にぎわいの創出やサステナビリティ施策の検討を支援する。例えば、鉄道の遅延情報などと組み合わせてビル周辺の人流データを可視化することにより、エリア内の店舗に誘引する施策につなげられる。
また、エリア内の飲食店などの口コミデータを生成AIで分析する機能も備えるため、テナント店舗の収益性向上に向けた施策の提案なども可能だ。