アマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパンは8月27日、AWSクラウドへの移行による温室効果ガス削減に向けた取り組みに関する調査レポートを公開した。

同調査は、同社の委託を受けてアクセンチュアが実施したもので、対象地域は、日本を含むアジア太平洋地域、米国・カナダ、欧州連合(EU)、ブラジルの4地域。

昨年に使用電力100%を再生可能エネルギーに転換

常務執行役員サービス& テクノロジー統括本部統括本部長 安田俊彦氏は、同調査の結果として、日本でAWSのデータセンターを使用して計算負荷の高いワークロードを実行した場合、オンプレミス環境に比べて温室効果ガスの排出量を98%削減することが可能であることがわかったと説明した。

  • 日本でAWSのデータセンターを使用して計算負荷の高いワークロードを実行した場合、オンプレミス環境に比べて温室効果ガスの排出量を98%削減可能

具体的には、同社のデータセンターにおいて、効率のよいハードウェアを利用していること、電力と冷却効率が高いこと、カーボンフリーの調達の3点が、温室効果ガスの削減・緩和に寄与しているという。

安田氏は同社の投資について、「当社は、2023年から2027年にかけて、日本に対し2兆2600億円の投資を発表している。その目的は、東京や大阪のデータセンターや生成AIを拡大するため。また、低消費電力のCPU、推論向けのCPUを独自で開発しているが、日本でも独自のハードウェアの開発を進める予定」と説明した。

また、安田氏は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の発展に伴い テクノロジーは社会を支える重要なものになってきているとして、同社が社会に対しても投資していると述べた。

その一つの取り組みが気候変動対策となる。同社は今年7月、使用電力の100%を再生可能エネルギーに転換するという目標を、当初の予定より7年早い2023年に達成したことを発表した。

独自CPUを利用すれば温室効果ガス排出量を最大99%削減可能

続いて、米AWS ESG & エクスターナルエンゲージメント部門責任者Head of ESG and External Engagement ジェンナ・レイナー氏が調査結果について説明した。アクセンチュアの推定によると、AWSのグローバルのインフラは、オンプレミスと比べ、エネルギー効率を最大4.1倍向上させることが可能だという。

国内に関する主要な調査結果として、AIワークロードをAWSのクラウドに移行して最適化を行うことで、日本の組織は、温室効果ガスの排出量をオンプレミスのデータセンターと比べて、最大99%削減できることが紹介された。

「最適化」とは、同社がデータセンターに導入している独自開発のCPUを利用することを意味する。安田氏も述べていたが、同社は電力効率向上への取り組みとして、独自のCPUを開発している。

例えば、 ARM ベースのCPUであるAWS Gravitonは、最大60%少ないエネルギー使用量で、Amazon EC2インスタンスと同等のパフォーマンスを発揮する。

また、深層学習のトレーニングのために開発されたAWS Trainiumは、生成AIモデルのトレーニングに必要な時間を短縮する。Trainium2は第1世代のTrainiumチップと比べて、最大4倍高速のトレーニング性能、3倍のメモリ容量を提供すると同時に、エネルギー効率(1ワットあたりの性能)を最大で2倍向上させる設計となっている。

レイナー氏は、「企業において、まだ85%のIT支出がオンプレミスを占めているため、AWSに移行してインフラを最適化することで、温室効果ガスの排出量を減らせるチャンスがあるから」と述べた。

データセンターのエネルギー効率を向上するための取り組みも

AWSはデータセンターの運用に必要なエネルギー量を削減するための取り組みも進めている。

例えば、データセンターの中央に大型の無停電電源装置(UPS)を配置する代わりに、小型のバッテリーパックを利用してラックごとにカスタム電源を設置している。これにより、電力効率を改善するだけでなく、可用性も向上させた。

加えて、ラックの電源供給を最適化したことで、ここでの最終的な電流変換による電力のロスも低減し、こうした取り組みにより電力変換時のロスは約35%削減されるという。

さらに、冷却の効率性を高めるために、場所や時期に応じて、自由空冷をはじめとするさまざまな冷却技術に加え、リアルタイムデータを用いて気象状況に適応している。

具体的には、蒸発媒体の動作を改善し、関連する冷却装置のエネルギー使用量を20%削減することに成功したという。