OKIエンジニアリング(OEG)は、2023年度末ごろより、同社の全事業拠点で使用するすべての購入電力を再生可能エネルギー(再エネ)由来電力に切り替え、電力を使用するすべての試験評価サービスによって発生するCO2の排出量をゼロ化したことを発表した。

サステナビリティに対する要求が高まっている昨今では、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、排出するCO2量の削減が求められている。また企業が事業活動においてカーボンニュートラルを実現するためには、自社の活動だけでなく、サプライチェーン全体にわたってCO2排出量を削減することが求められるようになっている。

欧米諸国を筆頭に、サプライチェーン全体でのCO2排出削減に向けた取り組みは具体化しており、法規制も進んでいる。また日本国内でも、サプライチェーンにおけるCO2排出量を可視化することが求められるなど、事業を進めるにあたってどの企業もCO2排出量を削減することが責務となりつつある。

こうした背景からOEGに対しては、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進む自動車業界の車載機器メーカーを筆頭に、同社が提供する試験評価サービスなどにおけるCO2排出量の情報開示へのニーズが大きくなっていたとのこと。2021年度には問い合わせ件数のうちCO2排出量開示要求が28.4%だったのに対し、2023年度には31.4%まで増加していたという。

  • CO<sub>2</sub>排出量開示要求の推移と内訳

    OEGに寄せられたCO2排出量開示要求の推移と内訳(提供:OEG)

そこで同社は、2025年までに全拠点での使用電力を100%再エネ化する計画を掲げ、電力会社が提供するグリーン電力への切り替え、およびJ-クレジット制度の利用により“カーボンニュートラルテストラボ”の実現を目指していたとする。

なお、100%再エネ化について2025年の完了を予定していたことから、OEGは2021年度より、同社が実施する受託試験サービスごとのCO2排出量情報を提供する開示サービスを開始。サプライチェーン全体でのCO2排出量開示のニーズに応えられる体制を整えたとのことだ。

しかし、受託試験におけるCO2排出量の算出には負担やコストが生じていた。試験時間が明確で装置の稼働時間が定まっている環境試験などでは、その算定は容易だというが、技術者による解析・評価装置の使用時間がその都度変わる解析・評価などの業務においては、装置の稼働時間などの算出が煩雑になり、CO2排出量の正確な開示が困難だったという。

そのためOEGでは、全拠点における100%再エネ化計画の達成前倒しに着手。自社で直接電力契約を行っている氷川台本社、および本庄地区の拠点の一部は、グリーン電力契約へと切り替えたという。一方で他社からの賃貸拠点においては、J-クレジット制度の利用による再エネ化を当初計画していたとのこと。しかし、従来は小売電気事業者のみが購入できた「非化石証書」の市場が拡大し、2021年11月より電力を使用する各企業による購入が可能になったことを受け、同制度を活用した再エネ化を実行。2023年度末には、一挙にOEG全拠点の購入電力を再エネ由来のものに切り替えたとする。これにより同社が提供する試験評価サービスについては、CO2排出量をゼロ化することが可能となった。

  • OEG氷川台本社

    OEG氷川台本社

使用電力の100%再エネ化、しかも当初計画の2年前倒しという大規模な取り組みを実行したOEG。しかしその経営判断を下した中井敏久代表取締役社長は、「実際にやってみるとそれほど大変ではなかった」と振り返る。電力コストは多少増加するものの、企業経営におけるインパクトは軽微であるとのこと。それに対し、環境配慮への意識が高まる中で「企業の存続のためにもカーボンニュートラル化は不可欠」だといい、いずれ必要となる変化を一足早く実行したとする。

また、特にCO2排出量削減に対する要求が高まる自動車業界を例に挙げ、「最終製品を取り扱う自動車メーカーにとっては、車載機器の試験や評価を行う我々の影響はかなり小さいものの、サプライチェーン全体のCO2排出量を開示するためには、そんな我々の小さなCO2排出量も把握する必要があり、情報収集の手間だけがかかる」とする。そして、「OEGの試験評価サービスがCO2排出量ゼロを明言できるようになることは、サービス内におけるCO2排出量削減を進める以上に大きな価値があると考えている」と語った。