日本の学生たちによる宇宙を目指した挑戦が、危機に陥っている。米国で模擬衛星を打ち上げる大会「ARLISS」への参加が、円安による渡航費、滞在費の高騰で難しくなっているのである。

学生の宇宙開発を支援するNPO法人「大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)」では、クラウドファンディングを実施し、広く支援を呼びかけている

  • クラウドファウンディングはREADYFORにて実施されている

    クラウドファウンディングはREADYFORにて実施されている (C) UNISEC/READYFOR

ARLISS(アーリス)は、毎年9月に米国ネバダ州にあるブラックロック砂漠で開催される、小型模擬人工衛星「CanSat」の打ち上げ実証実験で、競技会としての一面もあり、様々な国や地域の学生が集まり、技術やアイデアを競い合う。

学生たちは半年から1年程度の短期間で、ミッションの創出からCanSatの設計、製作、試験、打ち上げ、運用までの全過程を行う。また、それを通じて、問題解決能力や、リスクマネジメント能力も養うことができる。

宇宙開発は一般的に、規模が巨大かつ高コストで、学生が実地で経験することは難しいが、ARLISSは実際の宇宙開発に近い経験を得ることができる貴重な機会となっている。

開催が始まったのは1999年で、今年で25周年を迎える。参加経験者の中には、現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や米国航空宇宙局(NASA)、宇宙ベンチャーなどで活躍している人も多い。

UNISECは、「(参加者は) ARLISSでの経験を活かして、現在も多くの宇宙関連プロジェクトに携わっています。これは、ARLISSが提供する実践的な学習環境の価値を証明するものです」と、その意義を強調する。

2024年も開催が予定されているが、渡航費や滞在費など、1人あたり数十万円以上の費用が必要で、さらに近年は円安の影響で、経費が増大しており、学生の負担が重くなっている。2019年ごろと比べると、参加者が負担額は約1.5倍以上にも膨れ上がっており、経済的理由で参加を断念する学生が増えてきているという。実際に、参加学生からは「現地へはいけないメンバーが多くて辞退するしかない」、「怖いけど安いホテル泊まるしかない」といった声が聞かれるとしている。

そこでUNISECでは、経済的負担を軽減するため、クラウドファンディングを実施し、広く支援を呼びかけている。

期間は2024年8月31日までで、第1目標として150万円、第2目標として330万円を設定している。

第1目標の金額が集まれば学生の参加費用が減額でき、有料のトイレが無料で使用できるようになったり、ソファでしか寝ることができない学生が全員ベッドで寝られるようになったりできるという。

また、第2目標を達成すれば、参加チームによるロケットの打ち上げ費用の助成に役立てるとしている。

支援へのリターンとして、ロケットアイドルVTuber宇推くりあさんとコラボした缶型グラスや、ARLISS限定デザインのTシャツなどが用意されている。

UNISECは、「皆さまと一緒に、『未来の宇宙開発を支える学生たち』が全力で夢を追いかけられる環境を創っていきたいと考えております。どうか変わらぬご支援をよろしくお願い申し上げます」と呼びかける。

そのうえで、「ARLISSを通じて新しく出てきた技術がARLISSだけに留まらず、世の中へ発信されるようにするためにARLISSの知名度向上に向けた広報活動や来年度以降の協賛企業集めにも注力してまいります。これにより、ARLISSの影響力を拡大し、さらなる技術革新と人材育成の場を提供できるよう努めていきます」としている。

参考文献

未来の日本の宇宙産業を救え ~学生に米国での打ち上げ機会の提供を~(認定NPO UNISEC 2024/07/22 公開) - クラウドファンディング READYFOR
ARLISS