同志社大学は7月18日、研究チームがこれまでの研究で明らかにした筋力トレーニングでもストレッチングのように急性的に柔らかくできる「筋トレッチング」(筋トレとストレッチングをかけた言葉)を週あたり比較的高い頻度で長期間実施することで、筋力トレーニングにおいて筋サイズや筋量を増加させながらも、特定の筋肉における硬さを減少させることができることが示されたと発表した。

同成果は、同志社大 研究開発推進機構の川間羅聖特別任用助教、同志社大 スポーツ健康科学部の若原卓他准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米スポーツ医学会が刊行するスポーツ医学と運動科学を扱う機関学術誌「Medicine & Science in Sports & Exercise」に掲載された。

筋力トレーニングは、筋力向上や筋量増加を目的としてスポーツ・リハビリテーションの現場で広く使用されている。しかし、実践現場では「筋力トレーニングをやりすぎると筋肉が硬くなってしまう」という迷信が存在している。これまで実践現場では、筋肉の硬さを減少させるための代表的なアプローチとして、静的ストレッチングが実施されてきた。しかし、静的ストレッチングは、筋力を急性的に減少させ、筋力や筋サイズへのトレーニング効果を減少させることが指摘されている(そのため、動的ストレッチングが推奨されている)。

そうした中、研究チームは筋力トレーニングでもストレッチングのように筋肉を大きくかつ長時間伸ばすことで、大腿部後面のハムストリングスにおける特定の筋肉(半膜様筋)が、急性的に柔らかくなることを明らかにした(筋力トレーニングでもストレッチングのようにできることから、筋トレッチングと命名された)。今回の研究では、この知見を発展させるべく、筋肉を大きくかつ1回あたり長時間伸ばす筋力トレーニングが、ハムストリングス各筋の硬さに及ぼす長期的影響を検討することにしたという。

36名の一般成人男性を12名ずつ、週2回のトレーニング群(W2)、週3回のトレーニング群(W3)、コントロール群(CON)に分けて実験は行われた。W2およびW3の対象者は、筋肉を大きくかつ1回あたり長時間伸ばす筋力トレーニングを10週間実施。CONの対象者は、介入期間を通してストレッチング・筋力トレーニングを一切行わなかった。そして、超音波せん断波エラストグラフィを用いて、介入期間の前後にハムストリングス各筋の硬さ(剛性率)を、MRIを用いて各筋のサイズ(筋体積)を、筋力計を用いて膝関節屈曲の最大筋力(関節トルク)が測定された。その結果、W3において半膜様筋の硬さが慢性的に減少した一方、W2とCONではいずれの筋の硬さも慢性的に変化しないままだったとした。また、W2とW3では、半膜様筋のサイズと最大筋力も慢性的に増加していることが確認されたとする。

  • 実験の概要

    実験の概要(出所:同志社大学)

なお、研究チームは今回の成果により、「筋力トレーニングをやりすぎると筋肉が硬くなる」という実践現場での一部の理解を変え、実践現場で長年用いられてきた筋肉を柔らかくするためのアプローチを、ストレッチングから筋力トレーニングへと変える可能性も秘めているとしている。