ワールドスキャンプロジェクトと東京大学(東大)は7月18日、金属探知センサ「ジカイ」と3D画像マッピングシステム「SeaXerocks3」を水中ドローン(水中用有索遠隔操縦ロボット:ROV)に搭載し、深海環境におけるレアメタル資源に関する情報を取得して解析するためのシステムを開発したことを共同で発表した。

また2023年には同システムを用いて、資源が有望視されている1700mの海底において磁気データの取得に成功し、磁気異常の計測(資源がある可能性となる証拠)に成功したことも併せて発表された。

同成果は、ワールドスキャンプロジェクトと東大 生産技術研究所のブレア・ソーントン准教授らの共同研究チームによるもの。

  • 深海3000mに行ける深海調査用の大型ROVに取り付けられた新型磁気センサのジカイ

    深海3000mに行ける深海調査用の大型ROVに取り付けられた新型磁気センサのジカイ(出所:東大 生研Webサイト)

深海には、銅・鉛・亜鉛などのベースメタルや、リチウムイオン電池の材料などに使用されるコバルトなどのレアメタルを多く含んだ海底鉱物資源が点在することがわかっている。特に、日本は国土はあまり広くはないが、日本の領海に加えて排他的経済水域を合わせた面積は約447万平方kmで世界第6位と広大な面積を誇り、海底資源を採掘できれば、資源大国になれる可能性がある。

そのためには、どこの海底にどのような資源があるのか、資源の分布を詳しく把握する必要がある(すでに資源が確認されている場所も複数ある)。そこで求められているのが、水中ドローンやAUV(自律型海中ロボット)などの水中探査用の機体に搭載できる、深海の磁気異常を計測できるセンサーだ。

ジカイは、ワールドスキャンプロジェクトが開発した新型の金属探知センサで、磁気検出能力を活用し、海底の磁気異常を詳細に調査することができる。従来の金属探知センサとは異なり、水中ドローンのモーターが発するノイズや磁気を帯びた物体の影響を受けにくく、深海環境でも安定した性能を発揮することを特徴としている。

一方のSeaXerocks3は、ソーントン准教授らが開発した、カメラやシート状のレーザーおよびフラッシュの組み合わせにより構成され3D画像マッピングシステム。AUVやROVに搭載して、機体側のナビゲーションセンサ情報により位置制御が行われ、1.5~10m程度の高度から海底面の高精度の位置(緯度経度)、底質および微地形を測定することが可能のほか、機体側にナビゲーションセンサが搭載されていない場合には、SeaXerocks3に直接センサをつなげることもできるという。

  • 東大で開発された3D画像マッピングシステム「SeaXerocks3」

    東大で開発された3D画像マッピングシステム「SeaXerocks3」(出所:東大 生研Webサイト)

そして2023年の海底磁気調査において、ROVにジカイとSeaXerocks3を搭載して計測が行われた。そして、深海およそ1700mでジカイによる海底での磁気異常計測に成功したとする。またSeaXerocks3が取得した当該位置、底質および微地形データと磁気異常データの相関を解析することで、磁気異常データの性質を評価しているとした。

なお研究チームは今後、ジカイとSeaXerocks3の開発を進め、深海に眠るレアメタルなどの資源の存在量と位置情報を把握し、正確な海底資源マップを作成することを目指すとする。

また、現在、風力発電の設置場所として、日本でも洋上への設置の研究と実験が進められているが、洋上風力発電では発電したエネルギーを水中ケーブルで陸上まで送電する必要がある。問題は、送電ケーブルには強い磁界が発生し、従来の金属探知センサでは正確な測定が困難な環境となる点だという。ジカイは強い磁界環境でも安定した性能を発揮できることから、今後さらなる小型化を進め、AUVに搭載し、効率的な洋上風力施設の点検を行うことも目指すとしている。