Samsung Electronicsの社員の25%にあたる3万人余りが加入する同社最大の労働組合である「全国サムスン電子労働組合(NSEU)」は、賃金交渉の決裂を理由に7月8日から10日までの3日間にわたるストライキを行ってきたが、最終日となる10日に無期限ストライキに切り替えることを宣言した。組合幹部は、経営陣が労組側からの要求について協議する意向を示さなかったことを受けて決定したと述べたという。

今回のストライキは同社にとって史上最大の労働争議に発展してきている。米日刊紙のThe New York Timesが「テクノロジー大手の世界有数の半導体事業に混乱をきたしかねない、まれな労働争議の激化である」と伝えているほか、欧米の複数のメディアもこのストライキの無期限化を驚きをもった形での表現で報じている。

また、今回のストライキにおける半導体事業に対する影響について、調査会社TrendForceでは、「半導体工場は自動化が進んでおり、人の手を必要とする工程は少ないため、今回の3日間のストライキが同社の半導体生産に影響を与えなかった」と分析しており、例えストライキが延長されたとしても、現時点では半導体事業に大きな影響はないだろうとの予測を示している。

ただし、「今回のストライキは、半導体大手である同社が今後、多忙なスケジュールを控えている中で、微妙な時期に起きたといえる。また、同社は近々パリでGalaxyの最新製品を発表する予定としているほか、NVIDIAと共同でHBM3e製品の認定作業も進めている最中の出来事であり、NVIDIAに製品が採用されるか否かの重要な時期である」と、対外的な影響が生じる可能性を指摘している。

一方、サムスン労組は、「生産への支障が出始めており、ストライキが長引けば支障はさらに拡大し、回復には時間がかかるだろう。最終的には、経営陣はひざまずいて交渉のテーブルにつくだろう。我々は勝利を確信している」との声明を発表し、より多くのSamsung従業員の組合への加入とストライキへの参加を呼びかけている。Samsungは長年にわたって無労組経営を続けてきた経緯もあり、現在の経営陣にとって、今回のようなストライキを含めた労使交渉に対する経験に乏しいことも事態の混乱を招いているとする見方を示す業界関係者もいるようである。