AIで仕事がどうなるという予測は方々からされているが、コンサルティング企業はどうやら活況に沸いているようだ。
コンサル企業が沸き立つ生成AI
生成AIがブームになって2年が経過する。登場した時はOpenAIとMicrosoftが圧倒していたが、その後はLLM(大規模言語モデル)の種類も増え、クラウド事業だけでなくソフトウェア、ハードウェアベンダーがそれぞれのアプローチで生成AIブームに乗ろうと動いている。
一方で、技術ベンダー側はコストの採算が取れなかったり、Stability AIのように体制が整う前に幹部が辞任するような例も出てきている。その生成AIの影響については、それまで仕事がなくならないと言われた知的労働者の仕事が危ういとの意見も多く出た。
実はコンサルはその1つ。経営戦略を立てるのに必要な作業を生成AIがある程度できてしまうため、不要になるかもしれないというものだ。ただ、New York Times(ニューヨーク・タイムズ)の記事からは、正反対の事実が浮かび上がってくる。
生成AIを活用するにはどうすればいいのかという課題を抱えた企業が、コンサル企業の門を叩いているというのだ。例えば、製造業のReckitt Benckiserのマーケティングチームは、ChatGPTの登場を受け「AI技術はビジネスに役立つはずだが、どのように活用すべきかわからない。そこでBoston Consulting Group(BCG)に支援を求めた」という。
ビジネスデータを提供するDun & BradstreetはIBMと協力し、生成AIを活用してサプライヤー選択に関する分析やアドバイスを提供するサービスを開発した。
欧州の大手金融機関ING Bankは、QuantumBlackというMcKinseyのAIチームに依頼して顧客向けのチャットボットを開発したという。同紙によると、まだ新しい技術でありMcKinsey側も経験が少なく、チャットボットの実現可能性が確実ではなかったため、共同実験という形をとったとのこと。INGは対価を払ったが「多くのコンサルタントは何ができるのかを示したい、と無償で行うことも厭わなかった」と記している。
コンサル企業は“意外な”勝者
上手くいかなかった例もある。McDonald's(マクドナルド)は、生成AIを使ってドライブスルーの注文の受付を効率すべくコンサル企業と組んだが、AIが注文を間違えた報告を受けた後、一旦プロジェクトを終了した。
このように、コンサル企業にはAI案件が舞い込んでいるという状況のようだ。記事によると、2年前までゼロだった生成AI関連の案件による売り上げは現在、BCGの実に約20%を占めるという。
そのほかにも「16万人のコンサルタントを抱えるIBMは、生成AI関連のコンサルティング業務やAIモデルの構築・維持に使用できるwatsonxシステムで10億ドル以上の売り上げを計上した。Accentureは、昨年3億ドルの売上を計上した。McKinseyは今年、ビジネスの約40%は生成AI関連だ」と各社の活況ぶりを列挙している。
テクノロジーにおいて新しいブームが起こることは、コンサルタント企業が待ち望んでいたことだという。この熱気は、1990年代から2000年までのドットコムブームを彷彿とさせるているとのことだ。
当時、企業の幹部はWebサイトとは何かわからないながらも、とにかくサイトを立ち上げて欲しい、とコンサル企業に走ったのだそうだ。このような状況をレポートしながら、コンサルは「AIブームの意外な勝者」としている。ニューヨーク・タイムズが「The A.I. Boom Has an Unlikely Early Winner: Wonky Consultants」として報じている。