AIに仕事を奪われる--。昨今の生成AIブームの前からの懸念だが、生成AIでAIが急速に広がりつつある現在、AIは雇用にどのような影響を与えているのだろう?PwCが公開した「2024 AI Jobs Barometer」からは、AIが雇用市場を活気付かせている側面も見える。

AIのスキルを必要とする仕事はDB設計・管理が最も高い

PwCの調査は、先進国と分類される世界15カ国(合計で世界のGDP30%を占める。アジアはシンガポールのみで日本は含まれていない)から5億点以上の求人情報を分析したもの。

2016年以来、AIの求人はすべての求人の平均と比較すると3.5倍のペースで増えているという。2012年のAI求人1件に対し、現在7件が募集されているとのことだ。一部の市場では、AIのスキルを必要とする仕事は25%も賃金が高いという。

中でも、米国ではデータベース設計・管理は53%賃金が高く、会計士は18%のプレミアムが付く。AIが業務で最もよく使われている仕事では、雇用主が求めるスキルは25%高い割合で変化していることもわかった。これらの職業で適切な地位を維持するためには、新たなスキルを示す必要があるいう。

このようにAIが求められているのも無理はない。レポートによると、業務でAIの利用が進んでいるセクターでは生産性が4.8倍も改善している。最も生産性が上がっている職種は財務で、以下はIT、プロフェッショナルサービスと続く。

小売・食品サービス・運輸、製造、建築などはAIがあまり入っておらず、生産性の改善率も低い。顧客サービスやITなどはAIが業務に入っているが労働力不足が続いており、雇用は増えているものの、平均より27%低いペースだという。

新しいスキルを獲得する必要もある

AIは少子化(生産年齢人口の減少)などの対策になる一方で、AIを活用している業務に従事する労働者は、新しいスキルを獲得する必要があることも明らかになった。

PwCが世界のCEOを対象にした調査「Global CEO Survey」によると、CEOの69%が生成AIにより従業員の多くが新たなスキルの獲得を求められると回答、87%はすでに生成AIを導入しているという。

2019年から2023年のスキルカテゴリ全体の平均成長と比較すると、最も増加しているのは「アーティスト/スポーツ/レクレーション」で155%上回る。ヨガ講師(プラス426%)、スポーツ講師(プラス178%)などだ。

続いて、「パーソナルケア・サービス」(プラス82%)、「エネルギーと公益」(プラス58%)、「環境」(プラス48)となっている。共通して、AIが行うことが比較的難しいスキルと言えるだろう。

これに対して、成長が遅いスキルカテゴリは、「IT」(マイナス26%)、「デザイン」(マイナス23%)、「営業」(マイナス20%)、「分析」(マイナス14%)となっている。最も平均比で成長が遅いITを見ると、AI/ML推論はプラス113%と高いが、JavaScriptはマイナス37%、クラウド運用はマイナス7%となっている。

AIは仕事を再定義しており、労働者に新しい可能性をもたらしている。AIを活用すルことを学んだ労働者はより大きな価値を生み出すことができるとしている。