キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、グローバル・ブレインと共同で運営するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンド「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」を通じて、ホスピタリティ業界向けにIoTを活用したトコジラミ捕獲デバイスとソフトを開発するフィンランドのValpas Enterprises(ヴァルパス)に出資したことを発表した。

  • 「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」とValpasのロゴ

    「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」とValpasのロゴ (出所:キヤノンMJ)

キヤノンMJグループは、未来志向で社会課題を解決するために新たな事業の創出に取り組む専門組織「R&B(Research & Business Development)推進センター」を2024年1月に立ち上げ、スタートアップ企業や教育機関、行政などと共に新たな価値創造に向けた取り組みを進めており、そうした最先端の技術やビジネスアイデアを持つスタートアップ企業とのオープンイノベーションを加速することを目的に、100億円規模のCVCファンドであるCanon Marketing Japan MIRAI Fundを設立し、出資活動を行ってきた。その投資領域は、Well Being(ウェルビーイング)、Business Transformation(ビジネストランスフォーメーション)の2分野としており、今回の出資では「Life Purpose(精神的な豊かさを通じて、誰もが健康で生きる活力を感じられるサービスの創出)」と「Regional Regeneration(地域の可視化・再認識と地域発の事業の創出)」の実現を目指したものとなるとしている。

Valpasは、ホテルなどのホスピタリティ産業向けに、トコジラミの被害を未然に防ぐため、IoTを活用したトコジラミ捕獲デバイスとソフトを提供しているスタートアップ。トコジラミは人を吸血すると激しいかゆみを引き起こす害虫であり、カメムシの仲間とされているが、カメムシとは違い明るい場所が苦手で、昼間はベッドや壁、床などの隙間に隠れていることが多いため、部屋の衛生環境とは関係なく海外からの旅行者や帰国者が気づかないまま持ち込むことも多く、日本においても海外渡航者の増加に伴い問題となっている。欧米や韓国でも被害の様子などをメディアを中心に取り上げられているほか、最近では既存の殺虫剤に耐性を持つスーパートコジラミと呼ばれる殺虫剤耐性トコジラミもされるようになっており、世界的に駆除が問題となっている現状があるという。

トコジラミが発生した宿泊施設は、専門の害虫駆除業者による数週間から数か月におよぶ洗浄作業が必要となり、その間の宿泊停止を含めたコストの問題が発生するだけでなくトコジラミが発生したとしてブランドイメージの棄損も発生することとなる。Valpasが開発したIoTデバイスは、トコジラミの誘引・捕獲・駆除を行うことで宿泊施設に泊まる宿泊客への被害を事前に食い止めることを可能とするもので、宿泊機会の損失回避とブランドイメージ向上に貢献するほか、殺虫剤などの薬剤を使わないため、生態系への影響も少なく環境への負荷を抑えることも可能だとする。

なお、キヤノンMJでは、Valpasの事業が旅行客の安心安全、ホスピタリティ産業の持続的な発展に寄与することを期待すると共に、今後の世界的な旅行者増加によるニーズの拡大を想定して、今回の資金調達に参画することを決定。今回の出資を通じてキヤノンMJグループとして「安心安全でサステナブルな旅行・観光の実現」というテーマで新たな事業の創出を目指すとしており、今後の事業展開については「R&B」のWebサイトで公開していくとしている。