米IBMと中性原子方式量子コンピュータを手がけるPasqalは6月6日(現地時間)、量子を中心としたスーパーコンピューティングへの共通アプローチの開発と、化学および材料科学における応用研究を促進するために協業する意向であると発表した。両社はハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)の主要研究機関と協力し、量子コンピューティングと古典コンピューティングを統合して次世代のスーパーコンピューターを構築する量子を中心としたスーパーコンピューティングの基盤を確立するという。

両社では、量子コンピューターと先進的な古典的コンピューティングクラスタの複数のモダリティにわたる計算ワークフローを結合・組織化する、量子を中心としたスーパーコンピュータ向けのソフトウェア統合アーキテクチャを共同で定義することを目指している。ソフトウェア統合アーキテクチャは、オープンソースソフトウェアと技術コミュニティの関与に基づくものである、という共通アプローチに向けたビジョンを共有しているとのこと。

ドイツでHPC技術フォーラムを共催する予定であり、こうした取り組みを他地域にも拡大する計画。今回の協業で重要な点は、量子を中心としたスーパーコンピューティングの可能性を短期に示すことができる化学・材料科学の分野において、ユーティリティスケール(実用規模)の導入を促進する両社共通の目標となっている。

両社は、それぞれのフルスタック量子コンピューティングの主導的役割を活用し、昨年IBMが設立したMaterials(材料)に関するワーキンググループと協力することで、化学・材料科学のアプリケーションにおける量子コンピューティングの利用を前進させることを目指している。

ワーキンググループは、量子計算と古典的計算のハイブリッドな計算を活用し、化学向けのユーティリティスケールの計算向けのワークフローを構築するための最善の方法を探求するという。

なお、Pasqalは量子コンピューティングのリーディング企業であり、実用的な量子優位性を実現し、現実世界の問題に対処できるよう二次元・三次元アレイ内の中性原子から量子プロセッサを構築。

2019年にInstitut d'Optiqueからスピンアウトし、Georges-Olivier Reymond氏、Christophe Jurczak氏、Alain Aspect教授(2022年ノーベル物理学賞受賞者)、Antoine Browaeys博士、Thierry Lahaye博士により設立。同社はこれまでに1億4000万ユーロ以上の資金を調達している。