東京大学(東大)はSOLIZEと共同で、金属積層造形プロセスを高速で最適化するためのその場観察の手法として、サンプルの造形中の天面を観察することで、内部の3次元構造を予測する方法を開発したことを発表した。
同成果は、東大大学院 工学系研究科の長藤圭介准教授、同・大河原崚大学院生(研究当時)、同・趙漠居講師、SOLIZE 西来路正彦研究員、同・吉﨑寛研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、国際生産工学アカデミー(CIRP)の機関誌「CIRP Annals - Manufacturing Technology」に掲載された。
金属3Dプリンティングは、切削加工や型成型加工ではできない複雑な構造を造形できる方法として期待されている。実際に、複雑な冷却流路を有する金型や、骨組織のアンカリング構造を有する人工関節の部品など、その応用範囲はますます広がっている最中だ。
同手法では、金属粉を層状に敷き、レーザを操作させ溶融・凝固を選択的に行う工程を繰り返すことで、3次元構造を得る。その実行にあたっては、レーザのパワーやスキャン速度などといったパラメータの選択肢が膨大に存在しており、これまではその探索を作業者の勘・コツ・経験に頼ってきた部分があるという。
そこで今回の研究では、多孔質構造の3Dプリンティング試作中のサンプルについて天面を1回撮像し画像処理を行うことで、内部の構造を予測する方法を開発。3次元構造をX線CTで解析し、空隙率と平均孔径を算出した上で、その結果に合うような天面撮像方法と画像処理を実行することにより、内部構造を予測できるとする。
研究チームによると、今回開発された手法を用いることで、試作サンプルを取り外すことなく1回の撮像で内部構造を予測できるとのこと。25個同時に試作した場合において、X線CTと比較して18分の1の測定時間で予測することが可能であり、3次元画像を2次元画像から予測する予測確率に相当する「決定計数」は0.88と高い値を達成できたという。
なお同研究においては、SOLIZEにてサンプル作製および光学顕微鏡撮影を、東大にてX線CT撮像を行い、予測アルゴリズムの開発は両者共同で行ったとのことだ。
研究チームは新手法について、膨大なプロセスパラメータ候補から素早く最適化する、言い換えれば探索を大幅にハイスループット化する「プロセスインフォマティクス」の計測方法として有用であり、新たなプロセスの発見への強力なツールとなり得るとする。また今回の研究で対象としたステンレス材料の多孔質構造は、航空宇宙分野の次世代熱交換器を対象にしたもので、その製造パラメータ最適化のための開発期間を飛躍的に短縮させる方法として期待されるとのこと。そして熱交換機能の構造だけでなく、高強度構造・高耐食性構造にも適用でき、医療分野およびモビリティ分野にも貢献するとしている。