【CX戦略で変革】カウネット 宮澤典友社長「頼られるサービスに進化」

「われわれが目指すのは顧客のことを最も理解している企業になることだ」と意気込むのはカウネットの代表取締役社長の宮澤典友氏だ。宮澤社長はカウネットの親会社であるコクヨのデジタル化も推進し、コクヨとカウネットが強みとする「人材」「クリエーティブ」「データ」「テクノロジー」をフル活用して両社の成長を目指す。利便性だけでなく「本当に頼れるサービスに進化させていく」としている。

<売上高は978億円>

――前期を振り返って。

カウネット事業を含むビジネスサプライ流通事業の2023年12月期の売上高は前期比2.6%増の978億2000万円となった。卸ビジネスは、市場縮小の影響を受けているがECビジネスは大きく伸長している。売り上げだけでなく営業利益率が改善し、過去にない利益率を出すことができた。利益率の向上によって大規模な投資をする環境が整ったのは大きい。

――カウネットの社長に就任したことによる期待は大きいと思う。現在、取り組んでいることは?

カウネットはメーカーの中にあるEコマースであることが特徴で、メーカーECという分野では大規模EC事業である。

このメーカーECというポジジョンニングの成長に向け、現時点では、コクヨの総力をより活用したECを展開し、コクヨとカウネットのそれぞれの成長をどう組み合わせていくかが重要だ。

例えば、コクヨの大きな武器であるクリエーティブをカウネットに生かし、カウネットが持つ行動データをコクヨにも生かすようにするなどだ。

次いで、CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略という変革を投じていくことだ。カウネット単独で考えると、当社は小売り流通業となる。顧客に直接接点を持つ以上は、CXが非常に大事だ。最終的には、体験価値をどれだけ高めていけるかが、差別化も含めて重要なところ。

3つ目は、営業面の強化だ。BtoCとBtoBの違いの1つに、小規模から大規模の企業への対応が求められる点がある。

BtoBは、大小関係なく企業のニーズやその変化に対応することで事業が成長していく。また、欲しい商品があることを前提に、1万人の従業員が使うアイテムなどの大量発注への対応もある。

 

一度の大量発注など、BtoCにはない対応に応えるには、事前に企業の要望やニーズを把握しておく必要がある。要望に応えていくサービス提案の根本的には、営業力が非常に重要で不可欠となる。

<CX強化は商品開発に>

――重要な位置付けとするCX戦略の強化は、どんな成果があるのか?

まず、商品開発に生かせると判断している。

 

カウネット自体で、会員制コミュニティーを持っている。こうした場所から顧客の意見を収集することもでき、コクヨ側も活用することができる。

――組織強化については?

経営でみれば、経営指標や財務指標を大事にしないといけない。しかし、現在は「CX経営指標」を作り、これらを重要視している。

 

月1回の全体会議での持ち時間が10分間しかない中で、CX経営指標だけを話す。それだけ重視している。

 

組織強化においては、デジタルの利活用を強化する一環として「KOKUYO DIGITAL ACADEMY(コクヨデジタルアカデミー)」というデジタル人材の教育・実践プログラムをコクヨグループ全体で開催している。

これらは、ニーズが早く変化する時勢への適合が目的。デジタルの利活用能力が重要で、そのための人材を増やす必要がある。このアカデミーはカウネットのメンバーが主となって始動している。

<30年までに売上高5000億円を目指す>

――30年までの長期ビジョンに向け今年は何をするか?

30年までにコクヨグループとして売上高5000億円を目指す。カウネットは今年4月から購買状況などを診断できるアプリケーションを出した。物流やシステムなどの投資も長期ビジョン達成に向けて進めていく。流通の本質を捉えた施策をメインにそれぞれに投資して成長していく。