東京商工リサーチ(TSR)は5月24日、2023年度に「不適切な会計・経理」(以下、不適切会計)を開示した上場企業を調査し、結果をまとめたレポートを公開した。2023年度の「不適切会計」開示は58社、62件で3年連続で増加し、業種別の最多はサービス業であった。

  • 「不適切会計」開示数の年度推移

    「不適切会計」開示数の年度推移

2023年度に不適切会計を開示した上場企業は58社(前年度比5.4%増)で、件数は62件(同10.7%増)と3年連続で社数、件数が前年を上回った。2008年度の集計開始以降、2019年度の74社、78件をピークに2020年度は48社、50件まで減少したが、3年連続で増勢に転じた。2021年度までは海外子会社や関係会社で不適切会計の開示が多かったが、2023年度は国内外連結子会社などの役員や従業員による着服横領が目立つという。

開示した62件の内訳は、経理や会計処理ミスなどの「誤り」で30件(構成比48.4%、前年度比3.4%増)が最多。次いで、子会社・関係会社の役員、従業員の「着服横領」が21件(同33.9%、50.0%増)であった。「架空売上の計上」や「水増し発注」などの「粉飾」は11件(同17.7%)。

  • 内容別では「誤り」が最多の30件

    内容別では「誤り」が最多の30件

発生当事者別の最多は「会社」の26社(構成比44.8%)で、会計処理手続きなどの誤りが目立った。次いで、「子会社・関係会社」は17社(同29.3%)で、売上原価の過少計上や架空取引など見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立った。「従業員」は13社(同22.4%)で、外注費の水増し発注を行ったうえでその一部をキックバックし、私的流用するなどの着服横領が多かったとのこと。

  • 発生当事者別では「会社」が26社でトップ

    発生当事者別では「会社」が26社でトップ

市場別では、「東証プライム」が27社(構成比46.5%)で最も多く、次いで「東証スタンダード」が18社(同31.0%)、「東証グロース」が9社(同18.9%)。2013年度までは新興市場が目立ったが、2015年度以降は国内外に子会社や関連会社を多く展開する旧東証1部が増加し、2023年度も「東証プライム」が最多となった。

業種別では、「サービス業」の15社(構成比25.8%)が最多。以下、製造業の12社(同7.6%減)、卸売業が9社(同125.0%増)、小売業(同40.0%増)と情報通信業(同12.5%減)が各7社で続いた。

上場会社は、会計監査を担う監査法人が付かなければ上場廃止となってしまうため、監査法人との関係性が重要になっている一方で、監査を請け負う顧客1社への報酬依存度が15%を超える状態が5年続くと、翌年からその企業の監査を担当できないルールが2023年5月に導入された。監査法人の交代で不適切会計を見逃してしまうケースも予想されるだけに、監査法人の監査機能がどこまで高まるかも同社は注目している。