NTTドコモは5月10日、現副社長の前田義晃氏が6月14日付で新社長へと就任する人事を発表し、決算会見を開くとともにメディア向けに説明の場を設けた。なお、人事は6月14日開催の定時株主総会および取締役会において正式に決定される予定だ。現社長の井伊氏は相談役に就任予定。

本稿では、現社長を務める井伊基之氏と新社長の前田氏が語ったメッセージをそれぞれ紹介する。

  • NTTドコモ社長交代

現社長井伊氏「成果が結実するステージを新社長に託したい」

NTTドコモグループが4年をかけて進めてきた変革によって、お客様の期待を超える驚きや感動を届けられる会社に生まれ変わり、これからさらに成長するフェーズに入った。さらなる成長のためには経営陣の世代交代が必要であると考え、社長と副社長を若手に刷新し、私の後任として前田氏を指名した。

  • NTTドコモ 現代表取締役社長 井伊基之氏

    NTTドコモ 現代表取締役社長 井伊基之氏

振り返ると、私は新型コロナウイルス感染の真っただ中で社長に就任し、業務形態も出社からリモートワークへと大きく変化する中でNTTドコモの変革を進めてきた。NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアをドコモ子会社にしてドコモグループを再編し、3社のシナジーを生み出すことで事業領域をモバイルからスマートライフサービスや法人ソリューションへ拡大できた。私は2019年の減収・減益の決算を引き継いだが、さまざまな構造改革の結果として、2022年からは2年連続で増収・増益に転換できた。

事業ごとに振り返ると、モバイル事業では5Gの普及に積極的に投資を行ってきた。今や5Gは3000万契約を超え、全体の4割を超えるところまで来ている。また、ドコモの弱点であった若年層ユーザーを取り返すためにahamoを投入し、3年間で570万ユーザーの加入まで増やせた。

スマートライフ事業では、dポイント会員基盤を目標であった1億会員に到達させるとともに、投資・融資などの金融領域を拡大してきた。具体的には、4月に開始したAmazonとdポイントの提携強化や、マネックス証券、インテージホールディングス、オリックスクレジットなどのM&Aにより、事業拡大を進めた。

法人事業はモバイルとアプリやクラウド基盤を組み合わせて統合ソリューションを提供することで、大企業向けのビジネスを拡大してきた。また中小企業や自治体向けには、モバイルと固定の融合によって業務効率化を支援する「docomo business RINK(ドコモビジネスリンク)」を、DX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションとして提供している。

将来の収益の柱として育てる事業としては、XR(VR:仮想現実やAR:拡張現実などの総称)を手掛けるNTT QONOQ(コノキュー)、Web3を手掛けるNTT Digitalなどを設立し、サービスのイノベーションを加速した。また、国内市場のみならず国際市場での展開を加速するために、NTTドコモ・グローバル設立に向け準備中だ。

このように、ドコモグループの成長に向けた経営基盤の再構築を4年間かけてリードしてきた。これから具体的な成果が結実するステージを、次期社長の前田氏に託したい。

私たちドコモグループの存在意義は、世の中の役に立つこと。イノベーションをリードして、パートナーの皆様と共に新たな価値を創出して、世の中をもっと良い方向に変えていきたいという思いで掲げたブランドスローガンが「あなたと世界を変えていく。」だ。

私はこの4年間でたくさんのあなたと世界を変えられたのなら、役割を果たせたのではないかと考えている。

新社長前田氏「お客様起点での事業運営を進めたい」

ドコモグループは創業以来、通信技術を進化させ、その進化に基づいたさまざまな仕組みやサービスを生み出すことで社会を豊かにすることを目指してきた。そして、井伊社長のもとで変革によりビジネス拡大の土台を築いてきた。

  • NTTドコモ 新任代表取締役候補 前田義晃氏

    NTTドコモ 新任代表取締役候補 前田義晃氏

これからさらに社会の成長をけん引していく企業グループとなるため、私はいま一度当たり前に立ち返り、お客様起点での事業運営を進めたいと考えている。お客様起点の事業運営とは、お客様を中心に据えて常に向き合うということ。

お客様がドコモのサービスを使う際に感じる要望や不満を常に真摯に受け止め、速やかに応えていくことで、さまざまなサービスを通じてお客様体験の向上に取り組みたい。

例えば、通信品質への不満やサービスの使い勝手など一つ一つの声と誠実に向き合い、解決していく。お客様の満足度を高め、お客様からもっと支持され、信頼されるドコモグループを目指す。

それにより、当社グループのサービスを利用していただく機会を増やし、通信シェアやdポイントをはじめとするドコモ経済圏を拡大していく。そして、パートナーの皆様やマーケット全体の成長につなげていく。

合わせて、これからもIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)や6Gのような通信の進化をもたらす社会価値の創造をリードし、新しいつながりを生み出して豊かな社会を作っていきたい。

さらに、これからNTTドコモは日本だけでなく世界へ社会価値を提供する企業グループを目指す。グローバルビジネスを拡大し、M&Aなどにより国内外のパートナーと非連続な成長を実現したい。

「お客様と常に向き合い、お客様に支持されるドコモグループになる」。この当たり前を一番大きな目的として、ドコモグループは社員一丸となって進んでいく。皆様からこれまで以上のご指導とご支援を賜れますことをお願い申し上げ、私からの挨拶とさせていただく。