NTTドコモ(以下、ドコモ)は6月1日に、NTTグループにおけるXR(Extended Reality)事業のさらなる推進を目的として、企画会社を設立していた。同社は9月27日に、ドコモの100%出資子会社となる新会社の名称を「NTT コノキュー」として2022年10月1日から事業を開始することを発表し、記者会見を開いた。

NTTドコモから生まれたXR事業の新会社「NTT コノキュー」

XRとは、AR(Augmented Reality:拡張現実)やVR(Virtual Reality:仮想現実)、MR(Mixed Reality:複合現実)などの総称だ。新会社であるNTT コノキューでは、XR技術によるリアルとバーチャルを融合した新たな体験の提供を目指して、NTTグループの技術力と営業基盤を活用しながら、個人および法人へXRサービスを展開する。

法人向けとしては、これまでNTTグループが「NTT XR」ブランドとして推進してきたソリューションやノウハウを集結して、製造・流通・小売りなど幅広い企業を支援するとのことだ。

  • 記者会見の様子

    記者会見の様子、写真の人物はNTT コノキューの代表取締役社長 丸山誠治氏

ドコモはこれまで、「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」を理念に掲げて事業を進めてきた。今後はXR技術を活用してさらに生活者の人生の豊かさを広げるとともに、ビジネスにおける業務変革を提供するために、新会社の設立に至ったとのことだ。

XRで豊かな体験を実現するためには、コンテンツだけでなくネットワークやデバイスの高度化も必要となる。そのため、NTT コノキューはサービスからデバイスまで一気通貫で提供できる体制の構築を進める。NTTグループのR&D部門との積極的な連携により、技術開発にも注力する。

  • サービスだけでなくデバイスの開発にも携わるようだ

    サービスだけでなくデバイスの開発にも携わる

NTT コノキューはドコモの100%出資として事業を開始し、資産規模は600憶円を見込んでいる。人員はNTTグループ各社から人員を集結して200人程度から開始し、今後は採用などを含めて増員も視野に入れているとのこと。

NTT コノキュー(QONOQ)の名称は、以下の3つの意味に由来する。1つ目は「Quest Over Network」の頭文字だ。あらゆる高度なネットワークを活用し、人々の生活に自然と溶け込むXRの世界を探求する。

2つ目は、英語表記の「N」の字を軸に対称なデザインとすることで、ネットワークを軸に仮想と現実を自由に行き交う様子を表現している。3つ目は、始まりの合図でもある「キュー」を表している。これからXRの新時代を築いていくという意気込みを込めたそうだ。

  • 社名に込めた3つの思い

    社名に込めた3つの思い

NTT コノキューの主軸はメタバース・デジタルツイン・デバイス開発

NTT コノキューは、主に「メタバース事業」「デジタルツイン事業」「XRデバイス事業」の3領域で事業を展開する。

メタバース事業

メタバース事業では、仮想空間内での豊かなコミュニケーションや体験の創造を目指す。ドコモは2022年3月に、XR事業の中核を担う独自のメタバース「XR World」をリリースした。同サービスは誰もが気軽に体験できる環境を目指したマルチデバイス対応型のメタバースだ。

XR Worldは現在のところ音楽を中心としてコンテンツを提供しているのだが、今後はスポーツやコマースや教育などさまざまなパートナーとの連携を強化していくとしている。

その他、バーチャルライブの収録から配信までを一気通貫で行えるシステム「Matrix Stream」や、バーチャルシンガー「Tacitly(タシットリー)」の機能強化も進める。AI(Artificial Intelligence:人工知能)やWeb3などの先端的な技術との融合も視野に入れているようだ。

  • メタバース事業の概要

    メタバース事業の概要

デジタルツイン事業

デジタルツイン事業においては、XRを活用した現実世界と仮想空間の相互作用によって新たな価値を提供するという。ドコモはスマホで街頭のARを体験できるサービスとして「XR City」を2022年7月にリリースした。今後は「いつもの街に、いつもと違う発見を」を主題に、現実世界と仮想世界の相互作用による価値提供を目指す。

XR技術によっていつもの街を新しい姿にアップデートすることで、商業施設や観光地に新たな人の流れも生まれると期待される。XR Cityはこれまでにも事業者や自治体との協力を拡大しており、今後はさらに回遊の促進や街の魅力向上に挑戦する姿勢だ。

  • デジタルツイン事業の概要

    デジタルツイン事業の概要

XRデバイス事業

XRデバイス事業では、サービスと一体となって新たな価値を提供できるような自社デバイスの開発を進める。高品質なコンテンツやサービスをユーザーに届けるためには、高性能なXRデバイスの存在は欠かせない。より魅力的な体験価値を届けられるよう、NTT コノキューはXRデバイスの開発に着手する。

  • XRデバイス事業の概要

    XRデバイス事業の概要

法人向けサービス・ソリューション

法人向けサービスとしては、NTT XRブランドで培ったソリューションやノウハウを集結して、顧客企業の業務変革を支援するとのことだ。同社は、製造現場の作業員を遠隔から支援するようなソリューションをはじめ、オンライン診療の実現に資する医療向けソリューション、オフィスと自宅をつなぐ仮想オフィス空間などの提供を予定している。

サービスの提供に際しては、NTTグループ全体のアセットを有効に活用して、全国津々浦々の顧客をワンストップでサポートできるような体制を構築するとのことだ。

NTT コノキューの代表取締役社長に就任した丸山誠治氏は「私たちはアイデアとテクノロジーの可能性を信じ、開発者やあらゆる人たちと一緒に未知なる世界への探求を続けていきます。ドコモはこれまでコミュニケーションの可能性を追求してきました。ドコモから生まれたNTT コノキューはNTTグループのあらゆるネットワークやサービスを活用して、XRを用いた豊かな社会の創造を目指します」と決意を語った。

  • 丸山誠治氏

    丸山誠治氏

アバターのアイドルも参加する新ユニット「AKB48 SURREAL」が新曲披露

記者会見では、ドコモのXR worldとAKB48との共同プロジェクトとして結成された、リアルとバーチャルの混合ユニット「AKB48 SURREAL(エーケービーフォーティエイト サーリアル)」が新曲「わがままメタバース」を披露した。

ユニットにはアイドルグループAKB48のメンバーである小栗有以氏、倉野尾成美氏、下尾みう氏、千葉恵里氏、山内瑞葵氏が、それぞれYUI YUI、NARU、MIU、ERII、ZUCKYの名前で参加するのだが、彼女らに加えて6人目としてバーチャルメンバーのSURRYがアバターで参加する。

  • パフォーマンスを披露するAKB48 SURREAL

    新曲を披露するAKB48 SURREAL、リアル空間でのダンスが即時に映像化されバーチャルメンバーSURRYを交えたパフォーマンスとして映し出される

同ユニットは10月5日より、専用空間である「AKB48 SURREAL Theater」の提供を開始する。今後はメタバース空間内での有料オンラインライブの実施や、限定のエモート(ユーザーが自由に操作できるアバターの動き)の配布、オンライン交流イベントなども催される予定だ。

  • 記者会見の様子

    記者会見の様子