大阪市に本社を置くサンレディースは人材紹介や業務請負、棚卸代行などを行う企業だ。同社は、2020年10月から全社一斉にSalesforce Platform(以下、Platform)を導入した。目的は、名刺情報の共有だったという。
「それまでは、名刺を交換した人しかその情報を持っていないなど、情報が独立していました。そうした情報を共有していろいろな形で横展開をしたかったというのがPlatform導入の背景です」と説明するのは、サンレディース ITソリューションチーム マネージャー 石井良馬氏だ。
当初は、名刺管理に特化したソリューションの導入も検討したが、入力されたデータを集めて個人ごとの契約率などデータ分析ができる点や、いろいろなアプリケーションと連携できるといった汎用性、拡張性に魅力を感じて、Platformを選択したという。
システムを導入するも入力は進まず
当初は、「商談が終わったら名刺を読んで活動の記録を入力する」というルールを決めて、Platformの利用をスタートした。「些細なことでもいいので、とにかく入力する習慣を体にしみこませてください」と、データ入力を促したが、なかなか浸透しなかったという。
「入力しない、正しく入力できない、とりあえず入れておくといった状態が多かったです。また、そもそもログインしない人もいました。例えば、『電話で伝えたから、別に入力しなくてもいいと思った』といった回答もありました」(石井氏)
そこで、システムチームが現場に出向き、なぜ入力しないのか、ヒアリングを行ったという。
「私自身、営業やHRの現場を知らなかったので、各現場に出向いて、なぜ入力してくれないのか、逆に何をしたら入力してくれるかを聞いていきました」と石井氏は振り返る。
現場からは、入力が面倒なので選択式にしてほしいなど、さまざまなリクエストがあり、それらを入力画面に反映させていったという。営業部やHR事業部など、画面も部署ごとに変えた。このように、現場からの要望をシステムに反映する作業を繰り返すことによって、徐々に入力率が向上。社員も、データを入力していくと、自分の作業が楽になることに、少しずつ気づいていったという。
「最初はやらされているという感じがありましたが、自分が電話する必要もなく、その人に見に来てもらえれば情報共有されるので、全員がSales Cloudの情報を見に行くようになりました。今までは口頭ベースで報告、紙で稟議、企業取引前の与信審査も全部紙という業務プロセスだったので、管理職もExcelで入力して名刺画像を添付して、印刷して、ハンコ押してという仕事のやり方でした。それが、今ではすべてSales Cloudで行われ、ペーパーレスが実現しました。外出先でも与信審査や稟議を確認でき、承認も行えるので利便性が上がっていきました」(石井氏)
システム導入により稟議申請作業は10分から3分に
Sales Cloudの利用により、稟議申請作業は従来の10分から3分に、与信審査も15分から4分に短縮した。
最近では、請負現場で就業しているスタッフのスキル管理にService Cloudを活用している。
同社には、クレンリネンス事業部(CL事業部)というホテルの客室清掃業務を請け負っている部署がある。清掃業務は人にひもづく運用をしている会社が多いそうだ。例えば、経験者と未経験者を分ける場合、一回でも就業したら本当に経験者といえるかが問題になる。実際、そうした人はベッドメイキング、風呂やトイレの水回り清掃を同社の基準値である6分ではできないという。
そこで、同社はService Cloud上で、ベッドメイキングが何分ででき、水回り清掃を何分できるのかを可視化するようにした。さらに、どの部屋まで作業が終わっているかという進捗管理もService Cloudで見られるようにした。
これにより、今までLINEや紙、口頭ベースでやっていた進捗管理が、すべてService Cloudで行えるようになった。さらに、「スタッフの生産性も見ることができます。経験値も可視化されています。そのため、お客様から業務を依頼いただいた時、今までは感覚でやっていたスタッフのアサインをスキルによって判断できるようになりました」と石井氏は話す。