セールスフォース・ジャパンは3月15日、Salesforce Tower Tokyo(日本生命丸の内ガーデンタワー)にて、SalesforceのAI+データのイノベーションおよび国内での製品の取り組みに関するプレス・アナリスト向けの説明会を開催した。

同説明会には、専務執行役員 製品統括本部 統括本部長の三戸篤氏、同本部 プロダクトマーケティング シニアディレクターの松尾吏氏、前野秀彰氏の3人が登壇し、セールスフォースの生成AIに対する取り組みやEinstein1についての説明を行った。

  • Salesforce Tower Tokyo

    Salesforce Tower Tokyo

「製品統括本部」の設置で日本市場展開を推進

最初に登壇した三戸氏は、セールスフォース・ジャパンが25周年を迎えたことに触れ、25年間で1度も変わっていないというコアバリューを紹介した。同社のコアバリューは、Salesforceの行動指針として掲げられており、「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」「サステナビリティ」という内容が挙げられている。

「これらのコアバリューの中でも『信頼』という面に関しては、かつてないスピードで進化するテクノロジーの波の中では最も重要な指針として捉えています」(三戸氏)

  • セールスフォース・ジャパンのコアバリューを説明する専務執行役員 製品統括本部 統括本部長の三戸篤氏

    セールスフォース・ジャパンのコアバリューを説明する専務執行役員 製品統括本部 統括本部長の三戸篤氏

このような信頼を元に、セールスフォース・ジャパンは生成AIに関する製品機能を日本市場に積極的に展開している。2023年11月から2024年1月にかけて日本市場に生成AI製品をローンチし、2024年2月から4月に提供機能の拡充とプラットフォームの強化を実施する。また、2024年5月以降にはさらなるイノベーションの加速を検討しているという。

これらの取り組みに加えて、2023年度から新たに製品ごとの日本市場展開を網羅的・戦略的に推進する組織である「製品統括本部」を設立することで、より日本市場にコミットした製品展開を強化しているという。

製品統括本部では、1つの組織で一貫した活動を展開する「Integrated」、日本市場へのイノベーション展開をさらに加速させる「Innovation」、顧客視点で一貫性のある製品展開活動を実施する「Customer Success」という3つの柱を掲げて、活動しているという。

  • セールスフォース・ジャパンの製品統括本部のイメージ

    セールスフォース・ジャパンの製品統括本部のイメージ

生成AIのビジネス活用における成功方程式

続いて登壇した松尾氏は、「ビジネスにおける生成AI活用の要点とEinstein 1 Platformの役割」というテーマで、昨年発表されたEinstein 1 Platformについて説明した。

Einstein 1 Platformを説明するにあたって、最初に松尾氏は「生成AIのビジネス活用における成功方程式」の「CRM(顧客関係管理)+AI+データ+信頼」という内容を紹介した。この4つの中でも、コアバリューにも組み込まれている信頼という項目は、「生成AIはハルシネーションを発生させたり、データの安全性を損なう可能性がある」という理由を元に必要とされているという。

  • 生成AIのビジネス活用における成功方程式

    生成AIのビジネス活用における成功方程式

松尾氏は、生成AIのビジネス活用における成功方程式として、上記した4つが必要とされていると語る一方で、「すべての企業がその実現に苦労している」とも説明する。

「生成AIのビジネス活用を成功に導くには、CRM・AI・データ・信頼の4点は欠かせないポイントですが、『CRMとの分断』『高価なAI』『ばらばらなデータ』『AIへの不信感』などといった理由から、すべての企業が生成AIのビジネス活用の成功に苦労しています」(松尾氏)

  • 生成AIのビジネス活用における成功方程式について語るプロダクトマーケティング シニアディレクターの松尾吏氏

    生成AIのビジネス活用における成功方程式について語るプロダクトマーケティング シニアディレクターの松尾吏氏

このような企業の課題を解決するため構築されたのが、Einstein 1 Platformだ。同プラットフォームは、データエンジン「Einstein 1 Data Cloud」とネイティブに連携し、顧客データ、企業コンテンツ、テレメトリーデータ、Slackでの会話など構造化データと非構造化データを一元化して顧客の単一のビューを作成するものとなっている。

今後提供予定のsalesforce製品

また、セールスフォース・ジャパンは説明会内で新機能の追加についても説明した。新機能が追加されるのは、CRMアプリにAIをシームレスに組み込むためのローコードのツールセットである「Einstein 1 Studio」とSalesforceに組み込まれたハイパースケールデータプラットフォームである「Salesforce Data Cloud」だ。

Einstein 1 Studioには、管理者や開発者がノーコードでカスタムされた再利用可能なAIプロンプトを作成できる「プロンプトビルダー」と、ユースケースに合わせて適切なLLM(大規模言語)を選択できる柔軟性を提供する「モデルビルダー」の2点が追加された。これらの機能は3月8日から提供開始されている。

加えて、Salesforce Data Cloudについては、3つの新機能が追加される。今回、国内で提供される機能は、「データフェデレーション:Bring Your Own Lake」「Data Cloud ベクトルデータベース」「Einstein Copilot Search」の3点だ。

データフェデレーション:Bring Your Own Lakeは、スノーフレークやグーグルBigQueryに蓄積されたデータを、実データのコピー作業なし(ゼロETL)で連携できる機能。クラウド上の顧客データを生成AIで活用できるようにするという。

ベクトルデータベースは、PDFやメール、会話記録などを含むあらゆるビジネスデータと購入履歴、カスタマーサポートケース、製品在庫などの構造化データが統合され、生成AIのプロンプト上でグラウンディングして活用できるもの。

さらに、Einstein Copilot Searchは、ユーザーのリクエストを受け取りData Cloud ベクトルデータベースに埋め込まれたデータに対して、類似性検索を実行し、関連性が高く正確な回答作成を可能としている。

ベクトルデータベースが埋め込まれたデータに対して類似性検索を行い正確な回答を作成する「Einstein Copilot Search」と合わせて使うことでRAG(検索拡張生成)を構成して、信頼性が高い形で生成AIを業務に活用できるという。

「改めて、弊社のEinstein AIの特徴は『データ』です。信頼できるCRMやデータクラウドに格納されてるデータを、AIによりグラウンディング(特定の知識や情報源に基づいて言語モデルの生成内容を裏付けるプロセスのこと)して文脈を与えることで、ビジネスシーンで本当に活用できるAIを作ることができるという特徴を持っています。これに加えて、CRMとAIと信頼度という要素を足し合わせたのが、弊社が提供するAIプラットフォームの1番の特徴だという風に考えています」(前野氏)

  • 生成AIのビジネス活用における成功方程式について語るプロダクトマーケティング シニアディレクターの前野秀彰氏

    生成AIのビジネス活用における成功方程式について語るプロダクトマーケティング シニアディレクターの前野秀彰氏

最後に松尾氏は、上記のようにEinsteinの特徴をまとめて、説明会を締めくくった。