【データに見る「ECの地殻変動」】<第26回>越境EC大国「中国」に立ち向かう切り札とは?

日銀が金融政策を転換したものの円安が続いている。いつまで続くか予想は難しいが、越境ECを手掛ける事業者にとって円安の継続は歓迎したい思いだろう。

経済産業省によれば2022年における日本からの越境EC市場規模は、中国消費者向けが2兆2569億円、米国消費者向けが1兆3056億円となっている。アセアン諸国など中国、米国以外の消費者向けはまだ伸び代が大きいと見られるので、日本の事業者にとって越境EC市場のポテンシャルは高いのではないか。

<中国の10分の1以下>

ただし気を付けたいのは”売り手”としての中国の存在だ。複数のデータリソースを調べてみたところ、2023年の全世界の消費者に向けた中国からの越境EC市場規模は約50兆円と予想される。

日本からの越境EC市場規模は中国、米国向けを含めせいぜい4兆円がいいところだ。つまり売り手としての中国は日本の10倍以上の規模である。独身の日に日本製品が多く売れたニュースを聞くと日本は越境EC大国のように錯覚しがちだが正しい認識とは言い難い。

もう少し具体的なデータを見てみよう。2023年9月に行われた世界41カ国の越境EC利用者約3万人向けのアンケートで、直近1年間に購入した国はどこかという質問がある。

結果は中国37%、ドイツ13%、米国10%、英国8%、フランス4%、その他28%。ここに日本の名前はない。回答者の国別に見ても米国、英国、ドイツ、フランスといった経済大国は軒並み中国からの購入がトップである。中国が売り手としての越境EC大国であることを示すデータだ。

<コーディネーターが鍵>

その中国だが、経済の状態が思わしくないのは既知の通りである。世界の工場と呼ばれるほど中国ではこれまでに膨大な設備投資が行われてきた。

その結果、製造業の生産能力は凄まじいレベルに達している。それらの設備が無駄にならないよう、生き残りをかけて今後メーカーは激しい価格競争を繰り広げると見る。とすれば世界中の消費者向けに越境ECで販売する製品もさらに安価なものが大量に出回ると予測できる。TemuやSHEINがその好例だろう。

世界シエアが低いと見られる日本が、このような状況にどう立ち向かえばよいだろうか。品質差が許容範囲であれば、低価格の製品を消費者は選択するだろう。したがって、類似製品での真っ向勝負には注意が必要である。

筆者は中国製品とのポジショニングの違いをどう創り出すかがキーと見ている。アニメ、フィギュアなど製品そのものの独自性はもとより、日本ならではの製品の特徴をどう世界の消費者にアピールできるかがポイントになると読む。

とはいえ、大半の事業者は国内販売の延長線上に越境ECを位置付けていると思う。要するに製品ありきでの販売ということだ。果たして海外で売れるかどうか分からない、これが事業者の本音であり越境ECに二の足を踏む理由だろう。

そこでやはり切り札は、越境ECを支援するコーディネーターの存在だ。中国製品の席巻によって日本製品の相対的なポジショニングを意識するにはプロの目線が必要だろう。その大役を担うプレーヤーの活躍に期待したい。