オリンパスは2023年10月、CMO(チーフ メディカル オフィサー)にJohn de Csepel(ジョン・デ・チェペル)氏が就任したことを発表した。同社は4月15日、Csepel氏の来日に伴ってメディアとの交流の機会を設けた。本稿では、同氏がけん引する専門組織「メディカル アンド サイエンティフィック アフェアーズ」(以下、MSA)の役割と今後の展望について紹介する。

  • オリンパスのMSAチームが掲げるステートメント

    オリンパスのMSAチームが掲げるステートメント

MSAの活動の意義は?

同社はMSAについて、「医学・患者さんに対する医療機器の安全、臨床研究、医療専門知識、専門教育、医療経済、政策・マーケットアクセス、医療機関向け助成や関連する契約、感染防止・感染対策など多岐にわたる重要な分野の専門能力が統合されたグローバルな機能」と定めている。

つまり、医学や科学に関する専門知識を有効に活用し、患者の苦痛の軽減や臨床的成果の改善、QOL(Quality of life:生活の質)の向上に資するソリューションの展開を目指す活動だ。加えて、患者や医療システム全体の経済的価値の創出にも貢献する。

オリンパス CMOにJohn de Csepel氏が就任

Csepel氏は2001年からニューヨークにあるセントビンセント病院で低侵襲手術のチーフを務めた後、国境なき医師団でボランティア戦傷外科医に従事。米バークスメディカルやコヴィディエンにおいて外科領域のメディカルアフェアーズを率いたキャリアも持つ。

直近では2015年から2023年までメドトロニックのグローバルCMOおよび手術分野のメディカルアフェアーズ責任者を務めていた。現在もニューヨークで月に1~2回ほど外科医として臨床の現場に立つ。

  • オリンパス CMO John de Csepel氏

    オリンパス CMO John de Csepel氏

同氏は、今回オリンパスへ入社した決め手について「深く尊敬するリーダーシップ・チームに加わり、歴史のある企業に貢献できる機会を求めて入社した」と語っていた。

オリンパスの中でMSAが担う役割

Csepel氏はCMOの就任に際して、「真っ先に挙げるべき責任は、医療従事者や患者のニーズを聞き取って会社に共有すること」だと紹介した。今後は患者の安全を最優先事項と定め、CMOが管轄する組織の人材約400人を効率的に活用していくという。

具体的には、患者の安全性を担保しながら診療目的に合致する医療機器の展開を目指す。患者との対話と通じて、経済的かつ臨床的に意義のある、患者に本当に必要とされる医療機器やソリューションの開発を進める。

オリンパスの中でも、MSA組織は他の組織と比較して担当する領域の幅の広さが特徴なのだという。臨床試験、医療経済学の研究、メディカルアフェアーズ、専門職の教育、メディカルセーフティなどを提供して、患者がより質の高い治療にアクセスできるよう支援する。また、潜在的なヘルスケアのニーズを把握してオリンパス自身の成長機会にもつなげる。

  • MSAの役割

    MSAの役割

ちなみに、オリンパスの中ではMSAチームの発足が最も遅いそうだ。そのため、これまで様々な活動を実施してきたものの、MSAがもたらす同社ビジネスへの影響が明確化されていない点が課題となっている。

「当社はメディカルカンパニーとして医療従事者や患者の方を向くべきであるのに、これまで内向き志向が強かったように思う。MSAが自社ビジネスに与えるインパクトをより明確にできれば、全社的にもさらに外向きな視野が開けるはずだ」と、Csepel氏はMSA活動の意義を語っていた。