ウクライナや中東での紛争やロシアにおけるテロなど、世界では依然として紛争やテロが絶えないが、日本企業の多くが懸念するのはやはり米中対立や日中関係、台湾有事などである。そして、台湾には2万人の日本人が生活し、台湾周辺海域は日本へ向かう民間商船が航行するシーレーン(日本の貿易の99%は海上輸送)であり、台湾有事の発生は日本にとって死活的な影響を及ぼすことから、我々は自分事としてこの問題を捉える必要があろう。

そのような中、台湾有事を巡って今後ポイントになるが米大統領選の行方だ。今年1月、台湾では次の指導者を選ぶ総統選挙が行われ、蔡英文氏の後継者とされる頼清徳氏が勝利した。蔡英文政権の8年間で中台関係は劇的に冷え込み、中国による軍事的威嚇や経済的威圧が繰り返し示されたが、中国が独立勢力と敵視する民進党政権がさらに4年続くことになったことから、引き続き冷え込んだ中台関係が続くことになろう。

秋の米大統領選挙はバイデンVSトランプの4年前の再戦となるが、仮にバイデン大統領が勝利すれば、台湾を自由主義と権威主義の戦いの最前線と再び位置付け、台湾への防衛支援を継続し、場合によってはいっそうそれを強化するだろう。だが、トランプ氏が勝利すれば全く別のシナリオになる可能性がある。

トランプ氏はアメリカファーストを掲げ、現在進行形で戦争が行われているウクライナへの支援を停止すると主張し、大統領に返り咲けばそれを実行に移す可能性が高い。ここで懸念されるのは、トランプ氏が台湾をウクライナのように扱う可能性が排除できないことだ。

トランプ氏はNATOについても、「NATO加盟国が十分に防衛費を費やさないなら米国は守らない、ロシアの自由にやらせる」などと発言し、欧州諸国から不信感を買ったが、トランプ氏は米国の利益にならないことには興味がなく、自分たちでやれというスタンスである。

しかし、それは中国に間違った認識を与える恐れがある。習政権は台湾統一のためには武力行使も辞さない構えだが、“台湾侵攻においては米軍が台湾防衛に関与するのかしないのか、関与してもどれくらいなのか”を最も注視しており、トランプ氏のような外国の事には興味がない、自分たちでやれというスタンスは、中国の台湾侵攻という軍事的なハードルを大幅に低下させる恐れがある。

習政権にとっても台湾侵攻は大きな賭けとなる。仮に侵攻で失敗すれば、習政権の権威は一気に失墜することになるので、失敗は許されない決断となる。よって、習政権も最大限平和統一の道を探ることになるが、冒頭で触れたように今後4年間は親米政権が続くことから、中台関係の冷え込みは避けられない。そのような中、台湾に関心を持たない恐れがある大統領が米国で誕生すれば、中国にとっては1つのチャンスとなり、台湾有事の発生リスクは必然的に高まる。台湾の親米政権+他国に関心がない米政権という条件が整うことは1つのリスクと考える必要があろう。