2024年4月3日午前7時58分に台湾東岸沖でマグニチュード7.2の強い地震が発生。それに伴う台湾の半導体メーカー各社の被害と工場の稼働状況を、台湾の半導体市場調査会社であるTrendForceが即日調査して公開した。
その結果、主に台湾の北部と中部に位置するDRAM工場と、台湾の北部、中部、南部の地域に広がるファウンドリ工場のほとんどが製造装置を緊急停止させたが、その被害は最小限にとどまる模様だという。
台湾最北部の台北市林口地域では、今回の地震で最も強い震度4〜5程度の揺れが観測されたが、それ以外の地域では震度4程度であったという。半導体メーカー各社は被害状況などの確認のため順次操業を停止し、継続的な検査を進めているが、これまでのところ重大な設備の損傷などは報告されていないという。ちなみに台湾最南部の高雄は、震度3強ともっとも揺れが小さかったこともあり、Winbondの300mmファブは正常稼動を継続しているという。
TrendForceは、生産ラインの製造装置の損傷や酸化拡散炉の炉芯管への損傷の聞き取り調査を進めているとのことだが、4月3日夕刻時点で、重大な災害の報告はないため、各社は生産能力を早急に回復できることを見込んでいるという。また、AI半導体で注目を集めているTSMCの台南サイエンスパークでの4nmプロセスを利用したNVIDIA向け半導体製造ラインが従業員の全員避難が行われなかったことが注目されている。ただし、製造機器の検査が必要なため、一時的に稼働を停止する必要があった模様である。TrendForceは、供給への影響を最小限に抑えながら、操業を迅速に再開できると予測している。
DRAMの生産能力の多くを台湾で賄っているMicron Technologyは、製造装置の稼働を停止し、地震の影響を評価しているという。
地震までの数週間、DRAMおよびNANDのスポット市場は需要低迷の兆候が示されていたことから、今回の地震に伴いMicronとNanyaが操業を停止させたが、供給量そのものは潤沢であり、大幅な値段変動は避けられる見通しで、全体的な価格上昇も最小限に留まるものとみられるという。
そのためTrendForceでは、DRAMスポット価格が短期的に若干上昇する可能性があるものの、需要の低迷が続いているため、この傾向が継続するかどうかは不透明であると結論付けている。また、地震後の慎重な姿勢を反映する形で、DRAMサプライヤとモジュールベンダが価格設定交渉を一時的に中止したことも影響する可能性があるとTrendForceは指摘している。