ネットアップは3月27日、都内で「Formula(フォーミュラ) E 東京レース開催目前! カーレースの世界とデータ活用」をテーマにメディアラウンドテーブルを開催した。
ポルシェチームを支援するNetApp
2014年にスタートしたフォーミュラEは、FIA(国際自動車連盟)が統括するレースシリーズ。2020~2021年のシーズン7から世界選手権に格上げし、F1やWRC(世界ラリー選手権)、WEC(世界耐久選手権)と同格になり、EV(電気自動車)で速さを競う。
3月30日にフォーミュラEでは初となる日本を開催地に東京・有明で全16戦中第5戦の「TOKYO E-PRIX」が開催される。EV開発の最先端であり、サステナモビリティ、大都心の市街地サーキットで行われるのが特徴だ。
ネットアップは、2022年7月からポルシェアと複数年のパートナーシップを締結しており、技術・IT面でサポート。
ネットアップ エバンジェリストの神原豊彦氏は「ポルシェチームとはリアルタイムデータコラボレーション環境を共同設計している。フォーミュラEではレースサイドのIT専門のプットスタッフは1人のみのためシンプル・効率的なデータ管理を可能としなければならない。風洞実験といった車両開発に伴うカーボンネットゼロを実現するITサステナビリティに取り組んでいる」と説明した。
ポルシェがフォーミュラ Eで使用するマシンは「99X Electric」だ。フォーミュラEはレギュレーションの縛りが強く、各チームで基本的には同じ車体、タイヤで競い、異なる点ははパワートレインとなる。車体のセンサから得られたさまざまなデータを適切なサービス部門に提供することに加え、正しいデータを提供することで正しい判断を決定することにつなげているという。
レース向けたデータはどのように管理されているのか?
神原氏は「どのくらいの頻度でマシンが実データを出しているかと言えば、フォーミュラEは大体2~3週間に1回レースを行う。しかし、公道を使用するためサーキットで実際に走ってデータを取得するには本番の前日まで得られない制限がある」と話す。
2~3週間に1回しか実データが取得できないことから、次のレースに向けてポルシェでは開発本部でシミュレーションし、シミュレーションデータにもとづいてレースに向けたマシンのセットアップを行う。その後、練習走行でのテストと検証してサーキットと開発本部でリアルタイム共有し、レース中にデータに基づいた戦略決定を行い、レース後は開発本部でデータを解析するというサイクルを回している。
シミュレーションについて同氏は「例えば、99Xは前輪にブレーキがあるが後輪は回生ブレーキとなっているため、そのバランスをパラメータ設定とチューニングで行っている。そして、パラメータの設定は非常に重要だ。何度もシミュレーションを重ねて、例えば天候や車体の傾きなどを勘案してベストなセッティングをはじき出している。実際のレースでは膨大なデータが収集できるため、いかに2~3週間というフォーミュラEのスケジュールの中で回していくことは、EV開発という意味では大きなチャレンジになっている」と説く。
ポルシェチームのデータ基盤はMicrosoft Azure上に構築し、クラウドベースのデータ管理サービス「Cloud Volumes ONTAP」により、データの接続からキャッシュデータ、エッジデータなどを本部から自動的に管理。レースにおける重要なデータはローカルにキャッシュされ、すべてのデータはクラウドに置かれている。
また、IT専門のピットスタッフは統合データ管理コンソール「BlueXP」で必要に応じて、レース中でも設定やパラメータの変更を行い、リアルタイムでの管理を可能としている。
神原氏は「クラウド上にあるデータをオンプレミスの現場でもスムーズにするためのキャッシングと、クラウドとオンプレミスをハイブリッドな形で一元管理できるのは当社だからこそ可能にできるもの。また、分散データの整合性の観点では、分散ロック管理も強みだ」と述べている。
一方、サステナビリティにも配慮している。Cloud Volumes ONTAPではホットデータとコールドデータを自動的に振り分ける機能により、消費電力やコストの低減につながるという。同氏は「すぐ使うデータはホットデータに、今は使わないが必要なデータを効率良く保管という点は大きなポイントだ」と胸を張っていた。