昨年11月にウィズセキュアのカントリーマネージャーに就任した藤岡健氏。本稿では、就任後の想いや、今後の日本市場における施策について同氏のインタビューをお伝えする。

  • ウィズセキュア 日本カントリーマネージャーの藤岡健氏

    ウィズセキュア 日本カントリーマネージャーの藤岡健氏

ウィズセキュアは「思った以上にビジネスができている」

--これまでの経歴について教えてください。また、カントリーマネージャーに就任した所感はいかがでしょうか?

藤岡氏(以下、敬称略):大学卒業後にIBMで十数年、営業として製造業を担当しました。その後、モトローラ(現在はモトローラ・モビリティとモトローラ・ソリューションズに分割)、CA Technologiesでは個人情報保護法が制定され、大手銀行などにセキュリティ関連のソフトウェアを導入していました。

その際、セキュリティに関心を持ち始め、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ、ソニックウォールでそれぞれカントリーマネージャー、カスペルスキーでは社長を務めました。セキュリティ業界には20年ほどいます。

これまで欧州の企業で働いてきたという経緯からすると、個人的には思った以上にかなりビジネスができていると感じていますが、認知度はそこまでないのかなと思います。とは言え、パートナーは多く、SMBのマーケットではシェアは持っています。

--ご自身のミッションとしては、どのように考えていますか?

藤岡:われわれでは、従業員が200人~3000人規模をミッドマーケットと定義していますが、現在の顧客ベースは100人以下の企業が多いです。

日本におけるミッドマーケットの企業ではセキュリティの浸透率が他国と比べると、まだまだ低い状況です。そして、多くの企業でセキュリティ担当者が確保できておらず、プロダクトを導入しても効果が分からなかったり、運用が分からなかったりしています。

外国からもセキュリティレベルの向上について言及されており、例えばサプライチェーン1つとっても中小企業が多く存在しています。

ウィズセキュアは「Co- Security(共同セキュリティ)」を掲げて、セキュリティベンダーの視点で支援していますが、中小企業のIT環境を支えているのはパートナーです。

パートナーは顧客企業のセキュリティだけでなく、ネットワークやサーバ、PCなども請け負っていることから、細かく状況を把握しています。

このようなことから、当社のセキュリティの知見とパトーナーが把握しているお客さまの環境を合わせて、中小企業をセキュリティの側面で支援することができると考えています。

--ランサムウェアの脅威がある中で日本企業に対して、どのような貢献ができると考えていますか?

藤岡:WithSecureでは欧州を含めて、世界中の脅威情報を幅広く持っています。大手企業ではセキュリティ対策は進んでいますが、協力会社や関連会社を狙うケースが増えてきています。そのため、当社は脅威情報を提供するようなビジネスのベースは十分伸びしろがあります。

日本のSOC(Security Operation Center)は、セキュリティのガイドラインは米国に寄せていく傾向があるものの、例えば税金の考え方やクレジットカードの決済方法など、さまざまな面で欧州の考え方を取り入れています。

こうしたことから、SOCの事業者などにも当社が持つ脅威情報を提供し、支援できる領域はあると考えています。

一番の課題は認知度の向上

--エコシステムの考え方について教えてください。

藤岡:セールスのパートナーは多く、販売チャネルを増やしたいと考えています。販売チャネルを増やす方法としては、まだやれていないディストリビューターとの協業を考えています。

当社の製品価値を理解し、パートナーのお客さまに売るパートナーは多くいますが、まだリーチできていないパートナーも数多くいます。

そのため、関東圏だけでなく日本全国47都道府県の販売店に対してリーチするためにディストリビューターに協力をいただきながら、販売店を増やすということが1つ挙げられます。そして、日本語でのサービス提供を予定しています。

MSP(Managed Service Provider)/MSSP(Managed Security Service Provider)パートナーによる販売パートナーへのサービスビジネス支援も行います。これには営業やエンジニアの増員が伴うものになります。

--現状の課題は何かありますか?また、日本市場の展望についてはいかがでしょうか。

藤岡:一番の課題は認知度の向上ですね。エフセキュアを知っていてもウィズセキュア(※)となると、知らない人は多いかもしれません。

※編集部注:2022年3月にBtoB向けとBtoC向けに分社化し、BtoBはWithSecure(ウィズセキュア)、BtoCはF-Secure(エフセキュア)として事業を展開している。

そのため、認知させる活動に取り組み、広告宣伝だけではなく、付き合いのあるセキュリティ業界の方々にエバンジェリストになっていただくような活動も考えています。私自身も表に出て活動していくつもりです。

  • 藤岡氏

    藤岡氏

さらに、脅威情報はどの企業でも欲しいため、半期でレポートを出して認知拡大につながえればと思います。来年1月にパートナープログラムを展開します。

これらの活動を進めていくためにも今年は準備の年になります。金額ベースで前年比二桁成長を目指しており、実現に向けてさまざまな取り組みを行います。

例えば、EPP(Endpoint Protection Platform)、EDR(Endpoint Detection and Response)などエンドポイント保護の「WithSecure Elements Cloud」に、当社のセキュリティエキスパートがElements EDRで生成された、検知に関するレポートおよび是正策のアドバイスを提供する24時間365日の継続的なモニタリングサービス「Co monitoring」を組み合わせて、新しいセキュリティオペレーションのスタンダードにしようと考えています。

外部に委託するとコストがかかるため、中小企業では受け入れられるサービスだと思います。また、脆弱性管理の市場にフォーカスし、アタックサーフェス管理よりもリスクに対して包括的な管理を行い、脆弱性の発見するなど、意思決定を支援する「Exposure Management」を来年後半に日本企業に提供していきます。