MIXIは3月18日、19日、エンジニア、デザイナー向けのカンファレンス「MIXI TECH DESIGN CONFERENCE 2024」を開催した。初日の基調講演には、同社 代表取締役社長 上級執行役員 CEOの木村弘毅氏、同社の創業者でもある 取締役ファウンダー 上級執行役員 笠原健治氏が登壇。「MIXIのものづくり ~テクノロジーと共に創る新しい世界~」と題し、同社のこれまでの歩みが語られた。
人気アプリ「モンスト」「みてね」はなぜ生まれたか
MIXIは2004年にサービス提供を開始したSNS「mixi」の大ヒットを皮切りに成長を続けてきた。しかし、海外SNSの隆盛などの要因もあり、屋台骨事業としての継続が難しくなってきたという。木村氏は「自社が提供してきたコミュニケーションやソーシャルビジネスへの自信が揺らいでいた時期もあった」と振り返る。
そこで、再起を懸けて2013年にリリースしたのがゲームアプリ「モンスターストライク」である。最大4人までのアドホック通信により、実際に顔を合わせたユーザー同士が一緒にゲームを楽しめる仕様となっている。SNSサービスからMIXIが大事にしてきた「コミュニケーション」を生み出す新たなサービスとなった。
「最大4人で遊ぶ、という小さなコミュニケーションにフォーカスしてモンスターストライクを開発しました。ユーザーからユーザーへ、指数関数的に広がっていくことを想定していたんです。コミュニケーションの場を提供してきたMIXIとして、原点回帰をしました」(木村氏)
MIXIはモンスターストライクの他に、笠原氏主導の下2015年にリリースされた家族向け写真・動画共有アプリ「みてね」も多くのユーザーを抱えるサービスとして知られている。開発のアイデアは笠原氏自身の原体験にあったそうだ。
「自分の子どもが生まれて一週間が経った時に、『こんなにも写真や動画を撮るのか』と驚いたんです。それを家族に共有したいと思った時に、当時使えたサービスは共有、整理、保存に最適化されていませんでした。それをMIXIでやってみようと思ったのが『みてね』着想のきっかけでしたね」(笠原氏)
「開発において最も重視したこと」とは?
では、小さなアイデアから開発をスタートした両アプリはどのような経緯を経て、今の人気を勝ち得たのだろうか。
モンスターストライクについて木村氏は「(人気に)火が点けば一気広がる予想はできていたが、それまでが大変だった」と語る。当時のモバイルアプリでモンスターストライクに近い機能を持ったものはなく、開発会社との交渉が難航した時期もあったという。
開発は、「最初に問いたい仮説を絞り込むこと」を重要視して進められたという。木村氏は「最初の仮説からグッと来ていたので、あまり失敗する気がしなかった」と当時のことを語った。
一方、みてねは「利用サイクル」を意識したと笠原氏は話す。
「写真や動画の整理、共有、振り返りというサイクルに価値を見い出して開発しました。『驚きの振り返り体験』をユーザーが感じられるような機能の開発も行いました。結果として、みてねに写真や動画をアップロードしたくなるようなサイクルが生まれていると感じます」(笠原氏)
こうした一連の開発において、最も重視してきたのは「ユーザーを喜ばせること」だと両者は話す。木村氏は「誰かが求めている、あるいは将来的にあったら喜んでくれるものを作るのは大事」と考えを述べた。
「MIXIはコミュニケーションの場や機会をどういう風に提供できるかにフォーカスをしています。世の中を見渡して、コミュニケーションでのお困りごとや、遊び場があれば楽しめるんじゃないか、といったことに向き合うことがとても大事なのではないでしょうか」(木村氏)
コミュニケーションは人生の必需品
MIXIが追求するコミュニケーションについて、木村氏は「人生必需品」と語る。食料などの生活必需品と性質は違うものの、「それがないと人生がしんどい」(木村氏)との考えだそうだ。どれだけ豊かなコミュニケーションを想像できるかが、MIXIのものづくりにおいて重視されるポイントだと同氏は言う。
笠原氏もこれに同意し、「コミュニケーションサービスが好きな人が集まっている」とMIXIの社風に触れた。
「ユーザーサプライズファーストの考え方が定着していて、ユーザーへの驚きの提供や、期待を超えたいというモチベーションを持つ社員が多いと感じます。そういった社員のキャラクターがものづくりにも反映されていますね」(笠原氏)
最後に、両者から今後どのようなサービスを作っていきたいかが語られた。
木村氏は「今はユーザーの欲しいものがたくさんあって、サービス側はそれを細切れにして提供しているものが多い」と分析。その上で「同じものを体験する機会が減ってきている気がする。その中で我々はテクノロジーを使ってコミュニケーションの機会を作っていきたい」と述べた。
一方笠原氏は「ストレスのない居心地がいいコミュニケーションを創出したい」とコミュニケーションの在り方に着目しているという。
「レコメンデーションやアルゴリズムなど、AIが優勢な時代に逆行しているかもしれませんが、狭いコミュニケーションを増やせるような取り組みがしたいですね」(笠原氏)