富士フイルムと名古屋市立大学は3月18日、MRI画像から脳脊髄液腔の各領域を抽出するAI(Artificial Intelligence:人工知能)技術を共同で開発したことを発表した。これにより、「治療で改善できる認知症」ともいわれ早期発見が重要なハキム病(特発性正常圧水頭症)の診断精度向上が期待できるという。

なお、同技術は富士フイルムのクラウド型AI技術開発支援サービス「SYNAPSE Creative Space(シナプス クリエイティブ スペース)」を活用して開発したAI技術なのだという。

  • 脳脊髄液腔の各領域の抽出例

    脳脊髄液腔の各領域の抽出例(黄色:高位円蓋部・正中のくも膜下腔、水色:脳室、赤紫色:シルビウス裂・脳底槽)

クラウド型AI技術開発支援サービス「SYNAPSE Creative Space」

SYNAPSE Creative Spaceは、医療機関や研究機関における画像診断支援AI技術の開発を支援するクラウド型のサービス。プロジェクト管理から、アノテーション、学習、AI技術の試行など、一連の開発プロセスをすべてクラウド上で実行可能だ。

医用画像向けに特化した複数の学習モデルを利用でき、プログラミングなど工学的な専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発可能な点が特徴。希少疾患をはじめさまざまな疾病を対象とした画像診断支援AI技術の開発促進を目指して、2022年から国内の医療機関でトライアルを実施している。

「治療で改善できる認知症」とも呼ばれるハキム病

ハキム病は、脳に水(脳脊髄液)がたまって脳を圧迫し、歩行障害や認知障害、切迫性尿失禁などの症状をもたらす疾患で、くも膜下出血や髄膜炎などに続発する二次性正常圧水頭症とは異なり、先行する原因疾患はなく緩徐に発症して徐々に進行するものだという。症状が重くなると日常生活に介護が必要となる。

治療で改善できる認知症ともいわれており、脳内の脳脊髄液を排除することで症状を改善できるが、症状が進行してから治療を受けても自立した生活を取り戻すのは困難で、早期発見と早期治療が重要となる。

ハキム病は脳室の拡大を引き起こすが、同様の症状が生じる脳委縮との判別が難しいとされる。脳萎縮とハキム病を判別するために重要な画像所見としてくも膜下腔の不均衡分布(DESH)が知られるが、DESHは医師の主観で評価されるため医師によって判定が異なる点が課題となっていた。

富士フイルムと名古屋市立大学がAI技術を共同開発

今回、富士フイルムと名古屋市立大学は、富士フイルムの「SYNAPSE Creative Space」を用いて、DESHに関係する脳脊髄液腔の各領域(高位円蓋部・正中のくも膜下腔、シルビウス裂・脳底槽、脳室)を抽出するAI技術を開発したという。

頭部MRI画像からDESHに関係する各領域のアノテーション作業により作成したデータをAIに学習させて開発したもので、MRI画像から脳脊髄液腔の各領域を抽出できる。さらに、領域ごとの体積や領域間の体積比を算出することで、脳萎縮とハキム病を判別する際に重要な画像所見であるDESHの判定に寄与するため、ハキム病の診断精度向上が期待できるとのことだ。