日本マイクロソフトは1月23日、記者説明会を開き、「Dynamics 365」や「Power Platform」といったマイクロソフトのビジネスアプリケーションにおける、生成AI(人工知能)機能「Microsoft Copilot」を導入した最新機能を紹介した。
同社によると、世界中で50万社を超えるあらゆる業界の組織が同アプリを利用し、フォーチュン500のうちマイクロソフトのビジネスアプリを活用している企業の割合は97%にものぼるという。
Dynamics 365は、CRM(顧客関係管理)とERP(企業資源計画)が統合されたアプリケーション群。そして、Power Platformは、アプリ開発やオートメーション、ボット開発、BI(ビジネスインテリジェンス)のためのローコードプラットフォーム。両ビジネスアプリは、単一の共通データモデルで構築され、Microsoft 365とのシームレスな統合が可能。そして、これらのビジネスアプリのすべての製品にAI Copilotが内蔵されているのが特徴だ。
記者説明会でビジネスアプリケーション事業本部 本部長の野村圭太氏は「世界で13万を超える組織がDynamics 365とPower PlatformのAI Copilotを体験している。統一されたCRMとERP、ローコード、これにCopilotを組み合わせることでビジネスの未来を形作るイノベーションを起こせるはずだ」と説明した。
Copilotは、マイクロソフトのビジネスアプリケーションに対して、具体的にどのような相乗効果をもたらしているのだろうか。
あらゆる役割に応じたCopilotを導入「Dynamics 365」
Copilotを導入したDynamics 365である「Microsoft Copilot for Dynamics 365」では、AIによるコンテンツのアイデアの生成や、案件の概要や要約など、営業やマーケティング、サービスといったさまざまな業務を支援する機能が備わっている。
営業向けの機能を見てみると、Teamsの要約作成やEメール返信文の作成、営業案件の概要表示など、営業の生産性を最大化するような機能がある。
また、マイクロソフトの3万5000人の営業が活用し、83%が生産性が向上したと回答している。具体的には、平均的な営業が1週間で90分削減できたとし、68%がより少ない労力でCRMシステムを最新の状態に保つことができたと回答している。
マーケティング向けAI機能では、メールなどのコンテンツアイデアの生成や、顧客ターゲットセグメントの作成・推奨、顧客のインサイトの提供などがある。「これまで1時間 以上かかっていたのが、15分でできるようになった」といったユーザ企業の声もあるという。
また、サービス向けのAI機能は、顧客からの問い合わせへの回答作成や、チャットボットによるセルフサービス、作業指示書の作成とスケジューリングなどが備わっている。同社のカスタマーサポート部門では、Copilot導入によりケースの自己解決率が10%向上、チャット対応時間が12%減少し、処理時間も12~16%改善したという。
なお、営業向けCopilotとマーケティング向けCopilotは一部日本語対応している。
2月から提供開始「Microsoft Copilot for Sales/Service」
記者説明会では、「Copilot for Microsoft 365」のロール特化型ソリューションである「Microsoft Copilot for Sales」と、「Microsoft Copilot for Service」についても触れられた。Copilot for Microsoft 365の機能に加えて、それぞれの役割に応じた機能が備わったAIサービスだ。それぞれ2月1日から一般提供が開始され、提供価格はCopilot for Microsoft 365を含み月50ドル。すでにCopilot for Microsoft 365を契約済みの場合は月20ドルだ。
Microsoft Copilot for Salesでは、Wordで営業向けコンテンツを作成する際に、CRMのデータをコンテンツ生成プロンプトに直接統合したり、CRMのデータからのインサイトを、生成したコンテンツに直接反映できたりする。
一方のMicrosoft Copilot for Serviceは、ケースの要約や回答作成、専用チャットによるエージェントの生産性の向上、顧客のニーズに合わせた拡張やカスタマイズができる。また、コンタクトセンターなどに、すでにSalesforceやServiceNow、Zendeskを導入していても、数分で生成AIを導入できる点が特徴だ。
Copilotを内蔵するローコード開発基盤「Power Platform」
そして、AI Copilotを内蔵するローコード開発基盤として位置付けられるのがPower Platformだ。
ビジネスアプリケーション事業本部GTMマネージャーの内田真美氏は、「どのような人に対しても開発作業をできるようにする。日常的にアプリを使用するのと同じ感覚で、アプリが開発できるようになる。世界初のAI Copilot内蔵ローコードプラットフォームだ」と強調した。
すでに、自然言語のみでアプリ開発ができる「Copilot in Power Apps」や、ユーザー独自のカスタムCopilotをローコードで開発できる総合プラットフォーム「Microsoft Copilot Studio」が英語版で提供開始されている。。日本語版の提供時期は現時点では公表していない。
「Copilot Accelerator」でCopilotの活用を促進
また同社は、Copilot for Dynamics 365活用サービスである「Copilot Accelerator」も提供している。「IT管理者向け教育メニュー」「ユーザー向けトレーニング支援」「適用シナリオの整理」「効果等目標設定」「効果モニタリング」などを支援する。
野村氏は、「どの分野にAIを使えばいいのかわからないという声は多い。どういう場面で利用すると効果的なのかという点を含めて、固有のソリューション領域だけでなく業務プロセス全体を考慮した支援を行う。地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにしていく」と意気込みを述べた。