前回は中小企業と金融機関それぞれの立場から、資金不足の現状を分析し、お伝えしました。第2回では、中小企業の新たな資金調達手段として注目を集めつつある「オンライン型ファクタリング」について、解説します。
オンライン型ファクタリングの登場
ファクタリング自体は、以前から存在している資金調達手段の1つです。大まかに言うと、企業が保有する売掛債権をファクタリング事業者に売却することで資金を調達し、ファクタリング事業者は売掛債権の回収を行うというものです。
金融機関融資とは異なる資金調達手段であり、企業において融資がメインの調達手段と位置付けられる一方で、ファクタリングはその「補完的な」手段だと言えます。
「補完的」の意味をもう少し詳しく説明します。企業が事業を展開する際に、売り上げの入金までに期間が空くことがあります。
入金されるまでの期間、資金不足をカバーするには、金融機関からの追加融資ではすぐには対応できないケースがありますが、ファクタリングを使って売掛債権を売却すれば相対的に速く資金調達が可能となります。つまり、通常の資金調達は金融機関融資で賄い、とっさの資金不足の期間を最小化するためにファクタリングで資金調達を行う、という意味で「補完的」なのです。
「補完的」であるとは言え、ファクタリングを利用することで、資金繰りの改善につながるほか、仕入れ先への支払いが先になるなど、資金負担が重い案件の受注をあきらめることなく、事業拡大につながるチャンスをしっかり掴むことができます。
こうした中、わが国では数年前からFintech企業などが中心となって、パソコンやスマートフォンによるオンライン型の資金調達手段が生み出されています。
ファクタリングでも、2017年ごろから、オンライン型ファクタリングが複数の事業者によって展開されています。
オンライン型であることで、原則として対面の面談が行われないなど、ユーザー企業の事務負担が少なくなる点が大きなメリットとなっています。また、AIをはじめとした審査モデルの活用で審査などのコストを抑えることで、手数料率が低い水準に設定されているため、中小企業でも活用しやすくなっています。
このように、オンライン型ファクタリングは、中小企業にとって特に有用な資金調達手段と言えます。
金融機関とオンライン型ファクタリング事業者の協業が進展
オンライン型ファクタリングは日本でも徐々に広がりを見せており、金融機関とオンライン型ファクタリング事業者との協業の動きも進んでいます。
2023年末現在ではメガバンク、地方銀行、信用金庫など、54の金融機関がオンライン型ファクタリング事業者と手を組み、中小企業に向けてサービスを提供しています。
両者の協業によって、豊富な顧客基盤とブランド力を有する金融機関にとっては、資金需要に応えられなかった中小企業への資金サポートにつながるというメリットがあります。 また、ファクタリングのノウハウとシステム開発力を有するオンライン型ファクタリング事業者にとっても、自社と協業の両面によるサービス提供で、サービスの認知拡大や、それに伴う市場の健全な発展が期待できます。
オンライン型ファクタリング業界としての取組み
オンライン型ファクタリング市場の健全な発展に向け、業界の事業者有志で「一般社団法人オンライン型ファクタリング協会(OFA)」を2022年秋に立ち上げました。
官公庁といった関係団体との情報交換・セミナーをはじめとした活動を通じて、ファクタリング利用者やファクタリング事業者向けの啓蒙活動、業界の自主ルールの策定などを積極的に行っています。
オンライン型ファクタリングの今後の展開
先に述べたように「ゼロゼロ融資」の返済が足もとで本格していることから、今後の中小企業の資金繰りには注意が必要です。
コロナの感染拡大が落ち着いたとはいえ、中小企業の売り上げや収益が増加していく確度が高まらないと、中小企業から追加資金調達の需要が生じたとしても、金融機関側が資金需要に十分応えることが難しくなる恐れも考えられます。
したがって、売掛債権があれば資金調達が可能で、使い勝手も良いオンライン型ファクタリングに対し、注目が一段と広がる可能性があります。
本稿で述べてきたように、オンライン型ファクタリングは中小企業にとって有益な資金調達手段であるため、市場の健全な発展につながるような取り組みを業界として引き続き進めていく必要があると考えています。