アルバイト仲介アプリを手掛けるスタートアップのタイミーは22日、「ワーカー」と呼ばれる利用者の累計が700万人を突破したことを発表した。

  • アルバイト仲介アプリ「タイミー」の累計利用者は700万人を超えた

    アルバイト仲介アプリ「タイミー」の累計利用者は700万人を超えた

事業者数・事業所数も21年比で4倍超のタイミー

タイミーが提供するアプリ「タイミー」は、働き手の「働きたい時間」と事業者の「働いてほしい時間」をマッチングするサービス。

アプリの利用者は、働きたい案件に申し込むことで、履歴書や面接なしですぐに働くことができ、報酬は当日受け取ることができる。事業者は、来てほしい時間を設定すると、条件に合った働き手がシステムを介して自動的にマッチングされる。

タイミーが18年に開始したサービス提供以降、利用者は右肩上がりで増加している。21年12月に200万人、22年8月に300万人、23年1月に400万人、同年6月に500万人、同年10月に600万人と利用者の数を伸ばし、そして今回の700万人突破に至った。首都圏だけでなく、北海道や東北など日本全国で利用者が増加傾向にある。

また、タイミーを活用する事業者数、事業所数も順調に増加している。24年2月時点でそれぞれ9万8000事業者、23万拠点を超え、21年比で4倍以上に成長している。

  • タイミーを表す数字

    タイミーを表す数字

22日の記者会見に登壇した代表取締役 最高経営責任者(CEO)の小川嶺氏は、「日本の労働人口が約6500万人であることを踏まえると、約10人に1人がタイミーを利用していると言える。2月に実施した調査によると、タイミーはスキマバイトサービスの利用率とリピート率(2回以上利用した働き手の割合)はともに1位だった」と述べた。

  • タイミー 代表取締役 CEO 小川嶺氏(22日、東京都港区)

    タイミー 代表取締役 CEO 小川嶺氏(22日、東京都港区)

利用者増加の背景にあるのが、働き方の多様化だ。好きな場所・好きな時間で働ける利便性の高いワークスタイルが浸透、定着してきている。事業所にとっても「急な欠員を補充したい」、「特定のプロジェクトにだけ人材が必要」といったニーズがある。

「昨年までは飲食業や物流業、小売業などが中心だったが、ホテル業界や農業分野などの新たな業界でスキマバイトの利用が拡大している」と、小川氏は説明した。

また、利用者の年代や属性も広がってきている。23年12月時点の利用者は、10~20代の若年層が半数を占めるが、30~40代は35.2%、50代以上は14.7%と「すきま時間で副業として異業種に挑戦したり、シニア世代が定年退職後にお小遣い稼ぎだけでなく社会との接点を持つために利用しているケースもある」(小川氏)という。

  • タイミーの利用者の属性

    タイミーの利用者の属性

事業者の懸念を払拭する「第2のフェーズ」

一方で、事業者の視点に立つと、面接せずに雇うため「どんな人が来るかわからない」「仕事をきちんとこなせるのか」といった懸念を抱いてしまうことは否めない。こうした課題に対し、タイミーはさまざまな機能を実装して「働き手と事業者とのミスマッチング」を減らしている。

タイミーで働いた回数や時間、事業者からの高評価率やコメントなどによるレビューをアプリ上で表示するほか、働き手のスキルや実績を可視化する「バッジ機能」を提供している。

  • 働き手のスキルや実績を可視化する「バッジ機能」

    働き手のスキルや実績を可視化する「バッジ機能」

同機能は、働き手が良い働きをしてきたと認められた業務を示した機能。業務終了後、事業者が働き手をレビューする際、良い動きをしてくれた業務を認定することで、働き手のアプリ上に「バッジ」という形で付与する。認定するまでの具体的なアルゴリズムは明かされてないが、「利用者の履歴書の代わりになる機能で、事業者は任せる業務を事前に考えやすくなる」(小川氏)という。

ホテルチェーンのヒルトンは、コロナ禍で人材不足に陥った22年4月よりタイミーを導入しており、「最初は2つのホテルだけで、洗い物などの裏方業務を任せていたが、いまでは私が担当するすべてのホテルでエグゼクティブラウンジのホール業務や、スポーツジムの業務を担当してもらっている。タイミーの利用者は優秀な人が多い」と、同社の人事業務統括本部 統括本部長の麻生周治氏は話した。

  • ヒルトン 人事業務統括本部 統括本部長 麻生周治氏

    ヒルトン 人事業務統括本部 統括本部長 麻生周治氏

タイミーの小川氏は、「面接も履歴書もなくすぐに働けるというユニークさから誕生したサービスだが、今後は事業者が持つ懸念の払しょくにも注力していく。第2のフェーズに突入した」と述べた。

新規事業「タイミーキャリアプラス」で正社員への道も提供

さらに、タイミーは22日、資格や経験の有無にかかわらず、挑戦したい仕事ができるようになるための機会を提供する「タイミーキャリアプラス」を開始すると発表した。

希望者は「キャリア相談」や「資格や免許取得、スキル習得のためのリスキリング講座」を受けることができ、「キャリア形成や正社員としての長期就業を支援し、働き手一人ひとりの可能性を広げる」と小川氏は、新規事業のビジョンを説明した。

  • 挑戦したい仕事ができるようになるための機会を提供する「タイミーキャリアプラス」

    挑戦したい仕事ができるようになるための機会を提供する「タイミーキャリアプラス」

先に述べたバッジ機能をもとにタイミーから正社員採用の求人が紹介される。その後、タイミーを通じて、入社前に体験勤務をして理解を深めた上で、自身が望む業界への就職を目指すというものだ。事業者は、資格やスキルを身につけた働き手が採用できるため、入社後のギャップの低減や人材の定着などが期待できるとしている。

「必要な資格やスキルを持っていないことで自信をなくし、就業を断念してしまうことや、定職に就きたいと考えていてもなかなかその機会に恵まれないというワーカーは少なくない。未経験者採用をしている企業もあるが、育成には時間コストがかかる。離職率が5割を超える業界も多い。新サービスを通じて、履歴書では見えない地道な努力を可視化し、人手不足である日本の現状を変えていきたい」(小川氏)

利用料金は完全成果報酬型で、入社1名あたり理論年収の30%。求人掲載や候補者の紹介は無料だ。短期で退職した場合は、入社日から1カ月以内で80%、3カ月以内で50%を返金する。ヒルトンと日本通運はすでに同サービスを導入しており、日本通運では、2月にタイミーキャリアプラスを通じて正社員を採用したという。

メルカリも参入するスポットワーク事業

タイミーだけでなく、リクルートやLINE、パーソルといったさまざまな企業がスポットワーク市場に参入している。矢野経済研究所によると、2023年度のスポットワークサービス市場の市場規模は、前年度比27%増の824億円になる見通しだ。

フリマアプリを手掛けるメルカリも、24年3月頃から求人プラットフォーム「メルカリ ハロ」を提供する予定だ。同社のMAU(月間アプリ利用者数)2300万人のユーザ基盤を活用し、これまでの「モノ」「お金」「信用」の循環に「時間・スキル(働く)」を加えていく計画だとしている。

  • メルカリは24年3月頃にスポットワークサービスを開始する予定

    メルカリは24年3月頃にスポットワークサービスを開始する予定

小川氏は、「大きなパラダイムシフトが起きており、こらからも新規参入が増えてくるはず。フリマアプリとスキマバイトは全く異なる事業。変わらずに『はたらくを通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる』というミッションのもと、圧倒的なポジションを築いていく」と意気込みを述べた。