旭化成では、皆で学ぶ取り組みを通じ、個と組織の成長を同時に実現することを目指している。その施策の1つが、2022年12月からスタートした全社横断の自律型学習プラットフォームであるCLAP(Co-Learning Adventure Place)だ。1月22日~25日に開催された「TECH+働きがい改革 EXPO 2024 Jan. 働きがいのある企業になるために今すべきこと」に、同社 人事部 人財・組織開発室 室長の三木祐史氏と同社 人事部 人財・組織開発室の梅崎祐二郎氏が登壇。CLAPの考え方やその内容について三木氏が、CLAPを活用した新入社員向けの取り組みである「新卒学部2023」について梅崎氏が説明した。
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個が成長することで組織に好影響を与える
講演冒頭で三木氏は、旭化成が2021年の中期経営計画で人財戦略として掲げた「終身成長+共創力」という言葉について、「会社のために一生成長するという意味ではない」と述べた。会社に捉われずに本当に描きたいキャリアを描き、その成長を実現すれば、新たな専門性の獲得や個性を活かした働き方ができ、それが企業の競争力につながる。だからこそ、会社が社員の終身成長やキャリア実現に寄り添うような環境を提供していくというのがこの言葉の真意なのだ。そしてそのためにスタートさせたのが、CLAPの取り組みだ。
ただ、組織の成長のための人材開発と、個の自律的キャリア形成は整合しない面もある。従来の人材開発は会社にとって必要な資産である人材を経営に貢献できるように育てていくものだった。しかし自律的キャリアは企業や組織に依存せず自身でキャリアを開発していくものだ。そこで同社では議論を重ね、このプロジェクトの目指すべき方向性を2つ導き出した。1つは“旭化成にいると学びが止まらない”ことだ。皆と一緒なら学べる・頑張れるという雰囲気をつくることにより、従業員エンゲージメントが高まり、組織も活性化するのではないかと考えたと三木氏は説明する。もう1つは“学びを実践でき仕事を通じて成長できる”ことだ。これは、学ぶだけではなく、それを活かした経験が構築できている感覚が生まれれば、ワークエンゲージメントが高まり、それが成果や成長につながるという考えに基づいている。
「キャリア形成を支援して個が成長することによって組織に良い影響をもたらし、組織が強くなる。そういった個と組織の関係をつなぎ直すために学びという方法を使っていきたいと考えました。それがCLAPの目指す姿です」(三木氏)
各層各所に学び合えるコミュニティをつくる
CLAPの中で提供するコンテンツは、キャリアの可能性を広げる学びの幅、専門性を高める深さの2つの観点から考えられている。まず学びの幅については、新たな専門性の種を見つけられるように、SchooやテンミニッツTVといった外部コンテンツを活用することで、約1万1000を超えるコンテンツを用意した。そして専門的な力を高めるために、社内の有識者やハイパフォーマーの知見をコース化したものをプラットフォームに組み込んだ。
CLAPは社員にも受け入れられており、開始してから3カ月半程度経った2023年3月までにログインした社員は約8割、学習管理やいずれかのコンテンツを1つ完了した社員は6割以上いるという。ただし目的はあくまで自律的なキャリア形成なので、一時的に特定のコンテンツを学ぶだけでなく、主体的に学び続ける社員を増やさなければならない。そのために取り組んできたのが、皆で学ぶ組織づくりである。同社では、従来の階層別一律型の研修ではなく、各層各所に学び合えるコミュニティをつくるという方向へシフトし始めている。
「学び続けるためのコミュニティ、学び合いの場をいかにつくっていくかが重要です」(三木氏)