EYストラテジー・アンド・コンサルティングは2月9日、日本企業が抱えがちな「組織のオーバー客観化」の課題を解決するための新しい視点を研修として取り入れたプログラム「直観と主観の覚醒プログラム」についての説明会を開催した。
説明会にはEYストラテジー・アンド・コンサルティングのストラテジック インパクト マネージャーである森華子氏が登壇し、プログラムの開発背景の説明や実際のプログラムの導入のデモンストレーションなどを行った。
イノベーション力の推進と不正問題への対応は根本的に同じ課題を持つ
今回紹介された直観と主観の覚醒プログラムとは、多くの日本企業で問題視されている「イノベーション力や組織へのコミットメント低下」にアプローチするために開発された社員の直観と主観を覚醒させる体系的なプログラムだ。
同社では、この問題の真因は、客観性を過度に意識しすぎることで、主観的かつ抽象的な議論を軽視したことにあると捉えており、この行き過ぎた組織の客観化は、社会課題という認識を持って日本企業が取り組むべきだと考えているそうだ。
森氏は「『イノベーション』や『不正問題への対応』に対して、すべきことは理屈として分かっているが、実際の社員の言動は伴っていないのが現状」と語る。一見すると、イノベーションと不正問題への対応はかけ離れた存在に思えるが、一個人の心理の面で見ると「環境や風土(客観)のせいで主観的な違和感を口に出せない」という人が多いという。
「アイデアというのは『なんなんとなくこう思うんだけど……』といったような直感からさまざまな議論が生まれて、醸成されていくものです。つまり、最初の『なんとなく』が言えない風土なのだとすれば、イノベーティブな環境とは言えません。また、不正の問題に関しても、些細な違和感やちょっとした気付きをきちんと言える状態にあるかどうか、そして周りの人が受け入れられる環境かどうかが重要になってきます」(森氏)
ビジネスパーソンは「主観的客観」を目指すべき
ここまで主観と客観について日本企業の現状を紹介してきたが、森氏は「主観的客観」を持つビジネスパーソンを生み出していくべきだと説明した。
森氏曰く、主観と客観の割合を三段階に分けると、前例や他者の発言を過度に重視する「分析的客観」、個人的な捉え方を基点に客観的な意味も付加する「主観的客観」、個人的な捉え方を過度に重視する「独創的主観」となっており、日本のビジネスパーソンは分析的客観型が多いという。
分析的客観型は、企業として管理がしやすいという特徴を持つものの、解の同質性や排他性が高まり、面白さや洞察に欠けるというデメリットも併せ持つという。一方の主観的客観はすべてを論理で説明できる訳でないため初期はいぶかしがられるが、意味の伝達により共感や熱意を生むという特徴を持っている。
「このお話をすると『企業内が分析的客観型の社員が多いなら、独創的主観を持つ人材を採用して新たな風を吹かせれば良いのではないか』と考える人も少なくないのですが、分析的客観を持つ人材と独創的主観を持つ人材は、対立が起こりやすく、より排他的な思考を強めてしまう可能性があります。そのため、個人的な捉え方を基点に客観的な意味も付加する主観的客観を目指す必要があるのです」(森氏)
「違和感がある絵はどっち?」を言語化してみる
このような背景から直観と主観を覚醒させるためのプログラムの開発に至ったそうだが、主観を重んじる個人や組織文化をつくっていくためには、直観を活用した思考力の強化や建設的な対話の技術を定着させる必要があるという。
プログラム実践のポイントとしては以下の4点が挙げられている。
- 主観を使って解釈・会話せざるを得ない非言語媒体を効果的に活用することで、客観を起点とした思考から脱却を促す
- 主観の基盤となる、直観を効果的に使いこなす観察力や思考力を鍛錬する
- 互いの異なる視点を公平に表出する場をつくることで、集団の中での建設的な対話を促す
- 相手の主観を引き出し、異なる事象から共通項を見いだすコミュニケーションスキル(コーチング)を鍛錬する
説明会の最後には、参加していた記者を実験台として「2つの絵の違和感を言語化する」というプログラムのデモンストレーションが行われた。
最初に目の前に印象の異なる絵を提示され「2枚のうち違和感がある絵を選び、その理由を言語化してください」という質問が出された。筆者も、カラフルで少し雑多な印象のある絵と白黒で綺麗に数字が並ぶ文字盤の無機質な絵という、まったく特徴の異なる絵を見つめながら必死に違和感を探していると、同じ苗字つながりで、と最初に指名されてしまった。
まだ上手く考えはまとまっていなかったが「整理されていない印象を受けるのでカラフルな絵の方に違和感がある」と筆者は発言したが、この後に指名された記者たちは全員、筆者が選ばなかった絵の方が違和感があると言っていて、個人的には大きな驚きだった。
もちろんこの質問には正解などなく、「自分の中の『なんとなく』を口に出してみる」というのがプログラムの目的だ。些細な違和感や理由のない直感を言語化する能力を鍛えることで主観的客観ができるビジネスパーソンを育成していきたいという。
最後に森氏は「行き過ぎた組織の客観化が社会課題になっている中で、いかに主観や直観を組織の中に織り込んでいくか、そして個人の能力をどうのように風土に転じていくかということが重要です」と改めてプログラム開発に至った想いを語り、説明会を締めくくった。


