ビジネスパーソンにとって「学び」は不可欠だ。リスキリングやリカレント教育の重要性が叫ばれる昨今では、デジタルの知識やITスキルの獲得が学びの対象となることが多い。

一方、「日常業務に忙殺されて学びどころではない」という声も多々聞かれる。何かやるべきだとは思いながらも、結果的に現状に甘んじてしまってはいないだろうか。

「世の中が変化しているのだから、自分も変わらないと置いていかれる」と警鐘を鳴らすのは、IT人材の育成を支援するトレノケート 人材育成ソリューション部の田中淳子氏だ。キャリアコンサルタント、産業カウンセラーなど複数の資格を持つ同氏は、30年以上ビジネススキルを中心にコンテンツ開発や研修講師を行ってきた。

ほかにも、トレノケート法人音声チャンネルとして音声配信メディア「Voicy」において「田中淳子の『人材育成』応援ラジオ」を配信したり、部下・後輩の育成をテーマとした書籍を出版したり、と、さまざまなかたちで人材育成について説いてきたベテランである。

今回、田中氏に、リスキリングへの“正しい向き合い方”やキャリアに与える影響、学ぶ内容の選び方についてお話を伺った。

  • トレノケート人材育成ソリューション部の田中淳子氏

リスキリングの定義から見る「学び」の意味

企業の成長戦略として近年用いられる従業員のリスキリングについて、経済産業省が2021年2月に発表した資料「リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」では、次のように定義されている。

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

この定義を踏まえ、田中氏は「仕事が変わるということは自分も変わらなくてはいけない。そこに学びは必須になる」と明言。その上で、「新しいテクノロジーなどが登場した時には、2種類の人材が存在する」と話す。

「世の中に常にアンテナを張って自発的にどんどん学び直すアーリーアダプターな人々と、様子を見てから学び始める人々がいます。後者においては“多勢に無勢”になってきたら学びますが、今やその時を待っていては手遅れになってしまいます」(田中氏)

特にリスキリングにおいては、企業が人材戦略の一環として従業員のスキル獲得を支援することも多いが、田中氏は、本人がキャリアプランを意識して、主体的・自律的に学んだほうがよいとの見解を強調する。「会社のために学ぶと思うだけでなく、自分のキャリアを切り開くためにもリスキリングすべき」との考えを述べた。

新しい学びに尻込みするベテラン層へのアドバイス

田中氏は、キャリアの捉え方はビジネスパーソンの年齢層によって異なることに触れ、価値観にも違いがあると話す。

「現代は『右へ倣え!』と会社に言われて働く時代ではなく、キャリアも多様になってきました。1人1人がそれぞれの関心に基づいて、先手で動くことが組織力の向上や個人のスキルアップにつながると思います」(田中氏)

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