小惑星探査機「はやぶさ2」の拡張ミッションの1つ目、2026年7月予定の小惑星「2001 CC21」のフライバイ探査が近づいてきたことから、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は同小惑星の命名キャンペーンを2023年12月6日から実施している。そして2月2日には、同キャンペーンのチラシ・ポスターが公開された。なお、今回の命名キャンペーンの〆切は2024年5月9日(木)で、Web上で公開されている専用の名称案入力ホームページから応募することが可能だ。
はやぶさ2が地球に帰還して小惑星リュウグウのサンプルを届けたのは2020年12月6日のことで、その時点でイオンエンジンの燃料であるキセノンが半分ほどが残っていたことから、追加ミッションを行うことが決定された。その目標は、人類がまだ到達したことのないタイプの高速時点小惑星(直径数十m・自転周期約10分)である「1998 KY26」で、到着は2031年7月と片道だけで10年以上の長期航海となる。
はやぶさ2は本来、目標天体の周回軌道に入って長期観測を行うランデブー探査を得意とするが、1998 KY26に向かう途中に、別の小惑星「2001 CC21」のフライバイ探査を行うことも決定(秒速約5km(時速約1万8000km)で接近通過しながら観測を行う)。その2001 CC21への最接近は2026年7月であり、その日付が3年を切っていることから、地球帰還から3年が経過した2023年12月6日より、2001 CC21の命名キャンペーンがスタートした。
今回の命名キャンペーンは1人あたり1件までの応募で、複数応募の場合は、最後の応募が有効となる。応募締め切りの後に集計が行われ、提案件数が多いものから優先して名称が選定されることになる(必ずしも最も提案が多かったものが選ばれるわけではない)。名称の選定に対しては、公益財団法人 日本宇宙少年団(YAC)、認定NPO法人 子ども・宇宙・未来の会(KU-MA)から推薦された小中学生が協力する形で、最終的に選ばれた名称の応募者には、はやぶさ2拡張ミッションチームから記念品が贈呈される予定だ。
今後のスケジュールは、2024年夏ごろまでに名称が選ばれ、2001 CC21を発見した米国のLINEAR(LIncoln Near-Earth Asteroid Research)チームから国際天文学連合に提案するという(発見者・発見チームなどに命名権があるため)。ちなみに、イトカワもリュウグウもLINEARチームの発見で、今回で3回目となる。
また命名には、国際天文学連合で決められている規則に則った形になり、以下のルールを守る必要がある。
- アルファベットで16文字以下でなければならない
- 1語であることが望ましい
- 発音できるものでなければならない
- offensive(不快な、感情を害するような、攻撃的な)なものであってはならない
- 既存の小惑星や天然の衛星と同じまたは似た名称であってはならない
- 戦争や政治に関連した出来事や人についての名称は、その出来事が起こってから、あるいはその人が死亡してから、100年を経過する必要がある
- ペットの名前は推奨されない
- 商業的または主に商業に関係した名称は許可されない
- 2001 CC21は、地球接近天体(NEO)であり、NEOについては一般には神話に由来した名称を付ける(のが慣例)
このうち最後の「NEOである」という条件があることから、リュウグウのように日本らしい命名を行うには、日本神話に由来する名前が望ましいということになる。しかし、初代はやぶさが探査を行ったイトカワもNEOであるものの、例外的に日本の宇宙開発の父と呼ばれる故・糸川英夫博士にちなんだものであり、日本以外の国や地域の神話がだめ、神話以外がだめというわけではないという。
そして2001 CC21の命名に重要な天体としての特徴については、まずその大きさは少し幅があるが、440~700mほどと見積もられている。形もまだ詳しくはわかっていないものの、イトカワのような伸びた形だといい、スペクトル型はイトカワと同じS型である可能性が高いことがわかってきている。軌道は地球よりも内側に入る場合もあるが、だいたい少し外側を回っており、公転周期は1.05年で、自転周期は5時間ほどである。要するにまだ詳しいことはあまりわかっていないのだが、ぜひ数少ない特徴からそのイメージを捉え、イトカワやリュウグウと肩を並べられるような名称を考案し、ぜひ応募しよう。