島津製作所および同社の米国グループ会社SSI(Shimadzu Scientific Instruments)による研究チームは、ワシントン大学医学部の今井眞一郎卓越教授と共同で、質量分析技術を利用して生体に含まれるニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)の精密定量を可能にする新技術「dimeLC-MS/MS」を開発したことを発表した。

研究成果の詳細は加齢医学分野のオープンアクセスジャーナルである「npj Aging」に1月2日(米国時間)付で掲載された

SSIと今井卓越教授は2021年より質量分析(MS)技術によって、生体試料中のNMNおよび関連化合物を定量化する手法の開発に合意、これまで研究開発を進めてきた。今回発表された技術は、酸性水溶液を用いた代謝物抽出法と、仏グループ会社Alsachimで新たに作製された安定同位体化合物を組み合わせることで、血しょうや細胞に含まれるNMNおよび関連代謝物の精密な定量を可能とするもの。2種類の安定同位体NMNを使用することで、生体試料に含まれるNMNの精密な定量と、抽出作業における誤差の検出が同時に行えるという。

この共同研究は同社のトリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」が使用されており、この技術開発によって、従来法である有機溶媒による代謝物抽出法と比べ、迅速かつ正確なNMNおよび関連代謝物の定量が可能となり、老化研究の前進と健康寿命延伸につながることが期待されると同社では説明している。

本技術は、老化研究の前進と健康寿命延伸につながることが期待されます。SSIとワシントン大学は、2021年に「質量分析技術によるNMNの定量化」に関する共同研究契約を締結しており、同年から当社の基盤技術研究所も参画しています。「dimeLC-MS/MS」は本共同研究の成果です。

なお、ワシントン大の今井卓越教授は、今回の成果を踏まえ、「dimeLC-MS/MSの開発により、NMNおよび関連物質の精密絶対定量が可能になったことをうれしくなると思うとともに、これからはこの方法を用いて、ヒトにおけるNMNおよび関連物質の動態を精密に測定していくことが、非常に重要な課題となると思います」のコメントしている。

  • 共同研究に用いられた高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」

    ワシントン大学との共同研究に用いられた島津製作所の高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」 (出所:島津製作所)