東京大学(東大)は、「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」(NAD+)の前駆体である「ニコチンアミドモノヌクレオチド」(NMN)を経口摂取した場合に、筋力低下を始めとした老化現象に与える影響についての無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を実施した結果、健常な高齢男性に1日あたり250mgのNMNを12週間経口摂取すると、NAD+および関連代謝物の血中濃度が上昇し、歩行速度、握力などの運動機能が改善すること、ならびに聴力の改善傾向も見られることがわかったと発表した。
同成果は、東大医学部 附属病院 糖尿病・代謝内科の五十嵐 正樹助教、同・中川佳子医師、同・三浦雅臣医師、同・山内敏正教授(東大大学院 医学系研究科兼務)らの研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系のエイジングの関連分野全般を扱う学術誌「NPJ Aging」に掲載された。
老化や糖尿病、心血管疾患、がん、アルツハイマー病などの加齢に伴う疾患の発症には、NAD+の組織内濃度の低下が密接に関連しているとされており、NAD+の前駆体であるNMNの摂取により、加齢に伴うNAD+の低下を抑制・回復させ、老化に関連する疾患の予防につながることが多くの動物実験から報告されている。
ヒトにおいても、NMNの摂取が老化を抑制することが期待されており、サプリメントなども出回っているが、実際のところは加齢への影響はまだよくわかっていないという。そこで研究チームは今回、高齢者がNMNを摂取した場合の安全性と有効性を明らかにするために、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間試験を行うことにしたという。