【ECモールに聞く!2024年の戦略】『LINEギフト』嘉戸執行役員「相手ありきのECを磨き上げる」

LINEヤフーが運営する「LINE」アプリを通じてギフトが贈れるプラットフォーム「LINEギフト」の成長が続いている。2023年の「母の日」当日の総流通額は、前年比30%増になり、1日における流通額が過去最高となった。LINEモバイルで社長も務めたLINEヤフーの嘉戸彩乃執行役員に「LINEギフト」の成長の要因と、売れているショップの特徴、2024年の施策の展望などについて聞いた。

――2023年を振り返ってもらいたい。

2023年の振り返りということだが、実は私も「LINEギフト」の責任者になって、1年目だ。これまでの「LINEギフト」は「LINE」でギフトを贈る、メッセージを付けて贈るという、いわゆる”基礎固め”をしていた状況だ。私が担当になってからは、主にECの機能を強化した。

「LINEギフト」のミッションは「コミュニケーションで購入のきっかけが生じる相手ありきのECサービスを提供する」だ。もうコミュニケーションの機能はだいぶ整ってきており、2023年は”相手ありき”のECサービスを強化してきた。

――相手ありきのECサービスとはどういうことか?

それは主に「相手に外さない商品を贈れること」で、そのために相手が受け取り後に色や香りを選び直せる機能や、レビュー機能を搭載することに努めた。

ショップ数、取扱商品数も増え、2023年10月時点で出店ショップ数は約1500店舗、2023年11月時点で取扱商品数は約40万点を超えた。2023年5月には、ギフトを受け取った人が自分好みの色や香りに選び直せる機能の提供も開始した。リップやアイシャドウ、香りのするボディケア商品などは、その人好みの色や香りが存在する。そこで受け取った人が好みの色などに選び直せる同機能は大いに活躍する。

レビュー機能はギフトを受け取った人が商品に関するレビューを投稿できる機能で、この機能を搭載することで、どのような間柄の人がどのような目的でギフトを贈ったのかが見られるようになる。それが分かることで、ギフトを贈ることを考えている人にとって有益な判断材料になり、ギフトを贈る後押しになる。これこそが、「相手ありきの相手を思ったコミュニケーション」だ。

――取材先にも「LINEギフト」に出店している企業がいる。確かにバレンタインなど主要なイベントは好調で、それ以外でも利用につながることが多いと聞く。実際はどうか?

確かに2023年は主要イベント以外での利用も多かった。「LINEギフト」らしい”ありがとう”や”お疲れさま”など日常コミュニケーションでの利用はもちろん、11月22日の良い夫婦の日や歳暮、中元でも利用は多かった。

夏に関しては、「おつカレーサマーチャレンジ」と称し、人気のレトルト食品専門店「NISHIKIYA KITCHEN(ニシキヤキッチン)」とのコラボレーション企画を実施した。ツイッター(現X)でLINEギフト限定のカレーセットが当たるキャンペーンを展開し、サマーギフトの購入促進を図った。実際にキャンペーンも好調で多くの購入につながった。

――2023年は母の日の当日流通額が過去最高を記録したり、バレンタインの当日利用件数と利用者数も前年を上回ったという。ここまでの記録を達成できた要因は?

これこそやはり「LINEギフト」の強みである「すぐに・気軽に贈れること」が大きい。「LINEギフト」は相手とLINEでつながってさえすれば、簡単に商品を贈ることができる。母の日などでは、ギフトを買い忘れる人も多く、「LINEギフト」だと当日でも商品を贈ることができる。確かに”手元に届く”のは後日だが、ギフトを贈るという行為と気持ちは当日届く。実際に「LINEギフト」は当日の利用も多く、この利便性が高い流通額につながっている。

――「LINEギフト」で売り上げ増加につなげられている企業とそうでない企業の差は何なのか?

それは当社と一緒に「LINEギフト」専用の商品や見せ方を作っていけるかだと考えている。「LINEギフト」では、他のモールで売れている商品がそのまま確実に売れるという保証はない。「ヤフーショッピング」でよく売れている商品の画像が、そのまま「LINEギフト」でも通用するかというとそうでもない。きちんとギフトらしい商品セットや、商品画像を作らなくてはならない。

当たり前だが、ユーザーから購入されている商品が並ぶサービストップの「人気のギフト」に出ることでさらなる購入につながる。実績がないと商品は売れない。そこで「当社と一緒に商品段階からやりませんか?」と提案している。

「LINEギフト」では多くの特集やキャンペーンがあり、「そこに合わせた商品を企画しませんか?」「一緒にキャンペーンを実施しませんか?」など、一緒に作っていくイメージだ。商品や見せ方をきちんとやれている企業は売り上げ拡大に成功しているケースが多い。現に「LINEギフト」の中でも二極化が進んでいる。

――2024年の計画は?

基本は変わらない。相手ありきのECサービスということを磨いていく。

個人的には誕生日利用をいかに伸ばせるかが重要だと思っている。「LINE」アプリには、ユーザーが誕生日を登録して公開する機能がある。その登録を促すことで、「あ、この人は今日が誕生日なんだ」と分かり、「プレゼントを贈ろう」と思ってもらえるようになる。

また、「LINEギフト」にはユーザーがほしい商品を登録して公開する「ほしいものリスト」機能があるが、この登録を促すことも目指していく。

あとはリコメンデーション(提案)の要素も強めていきたい。「LINEギフト」に訪れる人は、①ウィンドウショッピング目的の人②贈る相手の年齢、予算感は頭にあり商品を検討したい人③この商品を贈りたいと決め打ちでくる人――がいると思っている。

それぞれ求める提案レベルは違うはずで、「LINEギフト」に訪れる全ての人に最適なギフトを提案できるようにしていきたい。