離れていてもリアルに感じられる「FEEL TEC」
遠くにあるモノをより近くリアルに感じることができる「FEEL TECH(フィールテック)」という人間拡張基技術を開発しているNTTドコモ。これまでも、伝統工芸の職人技やECサイトで伝えにくい手触りなどを離れていても体感できる「触覚」を共有するデバイスの開発に取り組んできた。今回、同社の最新技術の展示イベント「docomo Open House’24」で体験したのはその最新版となる、どんな味か知りたくなった時にその味そのままを遠隔地であっても体験できる「味覚」を共有する技術である。
例えば、テレビの食レポを見たときに、「ほんとうに美味しいのか?」「どのような味なのか?」など味を実際に体験してみたいと思ったことはないだろうか。このドコモが開発したフィールテックを使えば、自宅にいながらにしてテレビの向こうの味をその場で体験することも可能になる。同社の担当者は、「GACKTさんの味覚を体験してみたい」と語っていたが、そういった芸能人がテレビの向こうで感じている味覚を自分でも体験することが可能になる。
また、この技術の特徴的な点として、その人ごとの味覚に合わせて味が変換されたうえで味を体験できることが挙げられる。味覚は人それぞれ違い、またその日の体調によっても若干異なってくるため、その人がもつ味覚に合わせることでよりリアルなコミュニケーションを行うことができるとしている。
子供が感じている味を疑似体験
筆者がブースで味見を体験した際は、事前に自分の味覚の傾向について25項目の質問が出され回答しておき、その結果に基づく個人の味覚の感じ方や好みにあわせ「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」の五味に対する味覚感度のパラメータが生成され、それを元に実施された。
今回の体験の設定としては、料理中の母親が子供にトマトスープを味見してもらうが、子供は「美味しくない」といった反応を示すことを踏まえ、母親として子供がどのように味を感じているのか味覚を共有することで確認しようというもの。
そして、先ほど生成された味覚感度のパラメータの結果をもとに、子供が感じている味を筆者の味覚に合わせて調合された水が装置から生成されて提供される。
生成された水を味見してみると、酸味が物凄く強く、多くは食べられない印象だった。子供は、何でも口に入れ危険かどうかを判断する性質があるため、酸味や苦みは危険なものと感じるように大人と比べて強く感じる傾向があるという。このようにフィールテックを活用することで、子供が感じている味覚を疑似体験して、子供に合わせた味付けの料理を作ることができるようになる。
今回の体験で用いられた装置はまだ大きく、持ち運びは難しいサイズだが、将来的な技術革新によってスプーン型にして、持ち手の部分に五味のエキスを入れておくことで、いつでもどこでも味覚を体験できるようにできたら面白いだろうと担当者は語っていた。
この味覚共有技術を使えば、メタバースなどのバーチャルな空間で味を体験することが出来るようになったり、アニメやドラマ、映画など映像作品に出てくる食べ物の味を家や映画館にいながら体験出来たり、離れていても相手の感じている味覚をそのまま共有出来たりするようなワクワクするような未来が想像できる。フィールテックを通じて人間の体験の幅はさらに広がるだろう。