ソフトバンクは12月21日、岐阜大学工学部 久武信太郎教授、情報通信研究機構（NICT） 諸橋功研究マネージャー、名古屋工業大学大学院工学研究科 菅野敦史教授らとの研究グループが、Beyond 5G／6G時代を見据え、障害物による電波の遮蔽に強い300GHz帯テラヘルツ無線伝送（以下、テラヘルツ無線）を自己修復ビームにより実証したことを発表した。

300GHz帯テラヘルツ無線伝送を実証

無線通信の高速化・大容量化により、100Gbps以上の伝送速度を実現する次世代以降の無線アクセスシステム、Beyond 5G／6G技術の研究開発が進められている。300GHz帯は、5Gで利用が進む28GHz帯（マイクロ波帯）と比べてより広い周波数帯域が利用可能なため、超高速無線システムの候補として期待されている。一方で、300GHz帯は28GHz帯と比べて波長が1桁以上短いため、ビームの広がり角は1桁以上小さくビーム径が細くなる。

基地局の構成の中で機器を接続する回線であるフロントホール／バックホール用途の見通し固定無線通信（通信装置およびアンテナを柱などに設置して通信を行うシステム全般）では、近傍のシステムとの周波数共用が図りやすい一方、狭いビーム断面を鳥などの障害物が横切ると通信エラーが発生し、場合によっては通信が切断されることが懸念される。

  • 従来のテラヘルツ無線と研究成果

    従来のテラヘルツ無線と研究成果

自己修復ビームで無線通信路を形成

このたび研究グループは、300GHz帯においてベッセルビーム（ビーム断面内の振幅分布がベッセル関数に従うビーム）を生成し、ベッセルビーム断面内に設置された障害物により乱されたビーム形状が伝搬とともに自己修復することと、通常のガウスビームと比べて障害物による通信エラーの発生が少なくなることを実験的に確認した。

自己修復ビームにより、障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線通信路が形成可能であることを示したこの研究成果は、テラヘルツ無線の弱点とされてきた障害物によるビーム遮蔽に脆弱であるという問題を解決し、実用化への重要な一歩と位置付けられるということだ。

この研究成果は12月18日（現地時間）、米国物理学協会が刊行する応用物理学に関する全般を扱う学術誌「Applied Physics Letters」のオンライン版で発表された。

今後、研究グループは今回の研究成果を拡張し、屋外でのデータ通信のユースケースを目指した長距離化や、より大きな障害物でも対応を可能にする自己修復ビームの発生に関する研究を進めていく考えだ。